「黒い子宮」

投稿者:垣坂弘紫

 

智に働けば角が立つ。情に棹(さお)させば流される。意地を通せば窮屈(きゆうくつ)だ。とかくに人の世は住みにくい。
 これは小説『草枕』の冒頭文。かの文豪、夏目漱石の作品です。
 まさに言い得て妙と言いますか、この一文に俗世間の全てが収まっていると思われる方はきっと多くいらっしゃると思います。
 これからお話するのは、そんな俗世間から隔絶された世界、仏門に入られた一人の男性が体験されたものです。
 その男性、仮に築地さんとしておきましょう。
 今回、俗世間から離れた築地さんと私が話せる機会を設けることが出来たのは、築地さんから私宛に連絡があったからなんです。
 男性は五十代。
 体験されたのは十代の頃ですから、今からもう四十年近く前になります。
 当時、関西地方に住んでいた筑地さんはお父さん、お母さんと三人暮らし。どこにでもあるごく普通の家庭に生まれ育ち、普通に生活を送っていました。
 そんな筑地さんに突然の不幸が訪れました。
 お父さんが亡くなられたのです。
 連絡があったのは、筑地さんが高校で授業を受けているときで、ガラッと教室の引き戸が開いたと思ったら、教員室から来た先生が急に、
「築地、ちょっと」
 と言って、呼び出されました。
 それから後は急いで病院に行って、病院までは先生が車で送ってくれたと言ってました。
 受付で事情を説明して病室に向かうと……
 お父さんは既に亡くなられた後でした。
 死因は脳卒中。
 昨日まで元気に過ごしていたのに、人ってこんなに呆気(あつけ)なく死んでしまうんだと、当時は凄いショックを受けたと言ってましたが、築地さんよりももっと深いショックを受けたのがお母さんでした。
 息子の築地さんから見ても二人は本当に仲が良かったので、その時の落ち込み方は見るに堪えない有様でした。
 そんな状況ですから、お葬式の喪主は筑地さんが務めることになり、分からないことはお父さんのお兄さんが何かと世話をしてくれました。
 ただ、お墓はさすがに準備していなかったので納骨は後日改めてということになりました。
 一段落(いちだんらく)がついて、筑地さんは高校生活に戻り、お母さんも気丈(きじよう)に振る舞っていたそうです。
 お父さんが亡くなられたのは五月半ば。
 高校二年だった築地さんは、そろそろ大学進学について真剣に考えなければならない時期に来ていました。
 関西に住んでいましたので、御両親は地元の大学を望んでいたようでしたが、本人は出来れば東京の大学に進学したいという希望を持っていました。東京への憧れや親元を離れて一人暮らしをしたいと言う強い気持ちがあったからです。
 でも、一家の大黒柱が亡くなったとなれば話は別です。
 地元の大学でも、私立となると経済的な問題が大きく伸(の)し掛かってきます。
 本来なら、その相談相手をお母さんがしなければならないのでしょうが、四十九日が過ぎた頃から緊張の糸が途切れたのか、ぼうっと過ごす日が増えてきました。
 ただ幸いにも、お父さんのお兄さんが親身になってくれて、
「大学には行け」
 と強く言われたことから、進路の意志が固まりました。
 目標に定めたのは関西の公立大学。
 東京への憧れはありましたが、お母さんを一人にすることはどうしても出来ませんでした。
 そんな息子の思いやりに、お母さんは本当に喜ばれて徐々に元気を取り戻されたのですが……
 夏休みに入り、筑地さんも時間に余裕が持てたことから、お父さんのお兄さん、ここから先はおじさんとしましょう、そのおじさんにお墓の相談をしました。
 新しくお墓を建てるのか、おじさんの家系のお墓に入れてもらうのか、それとも遺骨を室内に納める納骨堂にするのか。
 お金を使わないことを考えれば、おじさんの家系のお墓に入れてもらうのが一番良いのでしょうが、でも、お母さんが賛成するかどうか。
 お母さんは本当にお父さんのことを愛していましたから、きっと反対するだろうと思っていましたが、案の定……
 それどころか、お墓も作らない、納骨堂にも入れない、ずっと家に置いておくと強い口調で言われたそうです。
 今の時代であれば、遺骨を遺灰にして、それを自然のある山や海に撒(ま)く散骨という供養方法があります。
 いつまでも故人と一緒にいたいと思う人は、遺灰の一部をペンダントに入れて身に付ける手元供養というものもあります。最近では高級貴金属のようなものや可愛らしいデザインなど種類も多種多様です。
 でも、当時はまだまだそう言う供養は一般的ではなかったようで、おじさんは反対されたそうです。
 しかし、お母さんは頑(かたく)なに自分の思いを貫(つらぬ)いて、結局お父さんの遺骨は二人で過ごしていた寝室で保管することになりました。
 受験勉強は今から始めないと間に合いません。対策としてまずは赤本を買って、試しに問題を解いてみて、自分に足りないものを考えてから、本格的に受験勉強の計画を立てることにしました。
 当時、筑地さんには付き合っている彼女がいまして、不幸な出来事に心を痛めてはいましたが、東京に行くことを諦(あきら)めてくれたことに対しては内心喜んでいたようでした。
 彼女さんが筑地さんのお宅に伺うのは、クラスメイトと一緒に線香をあげに来た日以来ですから、二ヶ月以上が過ぎます。
「お母さん、あれからどう?」
「何とかやってるよ」
 彼女さんも筑地さんを気遣って、深くは尋ねないようにしていましたが、その日はお宅に伺うので、事前に知っていた方がいいだろうと色々と尋ねたようでした。
 聞く限りでは特に問題ないようでしたので、不断通りに接しようと思って、彼女さんは笑顔でお母さんを見たのですが、自分でも分かるほどその表情から笑みが消えました。
 何か嫌なんです。何がと言われても分からないのですが、今までのお母さんとは何か雰囲気が違うんです。
 表情はとてもにこやかなんですよ。接する態度も今まで通りなんですよ。でも嫌なんです。帰りたいと思ったんです。
 でも……
「いらっしゃい。一緒に受験勉強してくれてありがとう」
 と言われると、体が動かなくなって……
 蛇に睨(にら)まれた蛙になったそうです。
 筑地さんの部屋に行くと、
「お母さんどうしたの」
 と尋ねずにはいられませんでした。
「どうしたって、何が?」
「何か変だよ」
「急に何言い出すんだよ」
「だって……」
「そりゃあ、親父が亡くなったんだ。ほんと、大変だったんだから」
 そう言われると、彼女さんもそうなのかなと思ったんですが……
 エアコンの効いた部屋で勉強を始めて少しすると、
 コンコン。
 ドアのノックが聞こえて、お母さんが入って来ると、アイスティーとケーキを持ってきてくれて……
 お母さんはすぐに部屋を出たそうですが、
「私、やっぱり帰る」
 と言うと、教科書やノートを鞄に仕舞い始めました。
「どうしたんだよ」
「駄目」
「何が」
「ケーキもアイスティーも食べない方がいい」
 と言うと、部屋を出て行きました。
 彼女さんが玄関で靴を履(は)いていると、
「あら、もうお帰り?」
 彼女さんはギョッとしましたが、
「すみません、急用を思い出して」
 とその場を繕(つくろ)うように言うと、逃げるように出て行きました。
「どうしたの」
 お母さんが筑地さんに尋ねると、
「さあ、急に……」
「そう」
 と言って、筑地さんの部屋に向かうと、
「手を付けなかったのね」
「ごめんね。せっかく用意してくれたのに」
「まあ、いいわ。また今度」
 と言って、お母さんは後片付けを始めました。
 彼女さん、霊感はないんですよ。そんな経験もないんですよ。
「それでも、何か嫌なものを感じていたわけですから、あのとき母は既に人ではなかったのかもしれません。僕はあの母親に取り込まれていたのかもしれません」
 と筑地さんは言ってました。
 その翌日のことです。
 昨日(きのう)のことが気になったので、筑地さんは彼女の家に電話をすると、彼女のお母さんから交通事故に遭ったことを言われました。幸い、軽い接触事故だったので、打撲程度で済んだそうですが、大事を取って今入院しているとのことでした。
 昨日の今日なので、まさかとは思いましたが、でも、彼女さんはそう思っていないらしく、病院に面会に行くと、
「お母さんとは早く別れたと方がいい」
 と言われ……
 人の親に向かって、何だその言い方は。おかしいのはお前だろ。
 と、筑地さんはそう言いそうになりましたが、その場は何とかぐっと堪(こら)えました。
 でも、その日以降、筑地さんは彼女さんから離れていくことになりました。

 おじさん夫婦には子供がいなくて、ですから甥っ子である筑地さんをとても可愛がってくれて、お父さんが亡くなられた後もしばしば筑地さんに会いに来ていました。
おじさんは彼女さんとは違ってお母さんに対して変な雰囲気は感じていなかったようですが、ただ、時々口論をしていました。
もちろん、話の中心人物は筑地さん。
あの子もいずれは大人になって独立して所帯を持つんだから、もっとしっかりしてくれないと困る。
初盆(はつぼん)を迎えて、その事を改めてお母さんに告げると、
「あの子はお父さんの一粒種。誰にも渡さない」
と、狂気に満ちた目でおじさんを罵(ののし)ったことがありまして、それを陰で見ていた筑地さんはさすがに怖かったと言ってました。
ただ、大学受験はやはり心配だったようで、それに関しては何も言いませんでした。
夏済みが終わって二学期に入り、師走を迎えたある日……
筑地さんはおじさんに連絡をして、二人きりで話がしたいと言いました。
連絡を受けたおじさんは間違いなくお母さんのことだろうと思ったので、すぐに会うことにしました。
筑地さんは開口一番、
「お母さんはおかしい」
おじさんは、何がと尋ねると、
たとえば、筑地さんのことを『あなた』と呼ぶようになったり、夕飯にビールが出たり、明らかにお父さん扱いをしてるんです。
そうでないときは、
「最近、お父さんに似てきたわね」
と言ったり……
筑地さんはどちらかと言えば母親似だったんですが、鏡を見ると自分でも確かにお父さんに似てきていると思えて……
学校では友達からも、
「お前、最近顔変わってないか」
と言われるようになり……
「おじさん、俺、あの家にもういたくない。母さんと離れたい」
これでは受験どころではない。このままでは筑地さんの将来が危うい。
何より、今のお母さんはまともな精神状態ではない。
「一度、精神科に連れて行くか」
と言うと、
「それよりも……」
と言って、夏休み、彼女さんの身に起きたことを話しました。
話を聞いたおじさんは深く考え込んだかと思うと、
「こんなことは言いたくないが、お前のお母さんは生き霊を飛ばしている」
突拍子もない返事に、筑地さんはきっと反発するだろうとおじさんは思っていたら、
「やっぱり、そうなのかな」
と、意外な返事が…… 
「俺も深くは信じているわけではないが、似たような話を何度か聞いたことがある」
「どうすれば良いの」
「明日の日曜日、縁切り神社に行こう」
関西地方には有名な縁切り神社が幾つかあります。
おじさんは筑地さんを連れ出して、その中の一つに行くことにしました。
もちろん、お母さんには何も告げずに……
当日早朝、筑地さんの家の近くまで迎えに行くと、二人は急いで神社に向かいました。
出発してから早二時間。
もう着いてもいいはずなのに、なかなか現地に着かず、地図で場所を確認するんですが、道は間違っていない。でも着かない。
「後ろにカセットがあるから、テープを回してくれ」
言われたままにそうすると、お経が流れて来ました。
「えっ、何これ?」
「お経のテープだよ」
「何で持ってるの」
「先祖供養。仏壇の前でたまに流すんだよ」
こんなものを用意していたことに、筑地さんは驚いたと言ってましたが、もっと驚いたのが、さっきまで道に迷っていたのに、お経を流すとすぐに到着したことでした。もし本当にお経の効果があったのだとしたら、お母さんの念が邪魔をしていたことになります。それがとても怖かったと筑地さんは言ってました。
車を駐車場に止めて、そこから現地まで歩きお参りを済ませると、絵馬を購入して願い事を書きました。
おじさんは率直に、
『甥っ子の親子の縁が切れますように』
と書き、筑地さんは、
『お母さんから悪いものが離れますように』
と書いたそうです。
そして、それを絵馬所に掛けようとしたときです。
パーン。
絵馬が二枚とも日本刀で切り裂かれたかのように真っ二つに割れたんです。
百歩譲って、木目に沿って割れたのであれば、ひょっとしたら目に見えない亀裂があって、それに力が加わって割れたのかもしれません。でも、割れ目は木目を断ち切っていたんです。
それを見た二人は恐怖よりも驚きが先に来て、少ししてからようやくこの信じられない出来事に底知れぬ恐怖を覚えました。
偶然なのか、それとも必然なのか、その様子を宮司の方が見られていて有無を言わさず、
「お祓いをしましょう」
と言われました。
筑地さんとおじさんは全く異論を示さず、案内されるままにお祓いを受けました。
帰宅の道は、お祓いを受けたとは言っても、やはり怖いと言うのか、二人とも無口のまま夕方近く家に着きました。
中に入ると、電気は付いていなくて、薄暗い状態。
「お母さん」
声を掛けても返事はない。
筑地さんはお母さんの寝室に入ってみると、
「うわっ」
「どうした」
「お母さんが」
見ると、お母さんが床にうつ伏せになって倒れていました。
「お母さん」
筑地さんは慌てて抱え上げて、顔をパッと見ると……
息をするのも忘れてしまうくらい、その顔に引き摺(ず)り込まれてしまいました。
お母さん、白目をむいて、口からは泡を吹いて、でも、その形相(ぎようそう)は怒りと憎しみで満ち満ちているのがはっきりと分かったそうです。
大変でしたね。
私がそう言って労(ねぎら)いますと、
「いえ、本当の恐怖はこれからなんです」
と、筑地さんは言われました。
その後、急いで救急車を呼んだのですが、お母さんはもう……
自宅とは言え、一人で変死状態で亡くなっていましたので、警察の取り調べも受けました。後日、司法解剖の結果を聞くことになるんですが、筑地さんもおじさんもあり得ない事実に言葉を失ったそうです。
まず、現場の寝室には嘔吐物(おうとぶつ)があったんですが、それを調べると人間の骨が混ざっていたそうです。後で骨壺の中を見たら確かに空っぽだったと言ってました。骨はお母さんの胃の中からも出て来たと言ってました。
「でも、もっと驚いたのが……」
と言うと、筑地さん急に黙ってしまって、じっと見えない何かを見つめながら、
「何だと思います?」
と言われたので、
「何でしょうね」
とオウム返しに言ったら、
「妊娠してたんですよ」
「えっ?」
「六ヶ月くらいだと言ってました」
「お母さん、誰かと付き合っていたんですか」
「いいえ、誰とも」
「……想像妊娠ですか」
「いえ、本当に妊娠していたんです。ただ……」
私は筑地さんが言葉にするのを待ちました。
「お腹の中にあったのは胎盤だけ。石炭のように真っ黒な子宮と胎盤だけで、赤ちゃんはいなかったんです」
「どういうことですか」
「分かりません。医者もどういうことなのか全く分からないと言ってました」
死亡推定時刻はちょうど神社でお祓いを受けていたときで、亡くなってしまったのは、念を弾(はじ)き返されたからだろうかと、筑地さんとおじさんは話し合ったそうですが……
不幸中の幸いは彼女さんがそれに気づいたことだと言ってました。
霊感なのか、守護霊が守ってくれたのか、いずれにしても良かったと言ってました。
大学卒業後、社会人となり、会社の寮で一人暮らしを始めて、それなりに順風満帆な生活を送っていた筑地さん。ただ、女性運だけは全くなかったそうです。
デートしてもすぐにケンカをしたり、お付き合いしても長続きしなかったり……
そんな愚痴をおじさんと電話で話したら、
「気になるようだったら、またお祓いに行った方がいいかもしれないな」
あれからもう何も起きていなくても、やっぱり筑地さんも何となく心に引っ掛かるようで……
「また、行ってみるか」
と思い、床(とこ)に就(つ)いたその日の夜。
筑地さんはその日から毎晩同じ夢を見るようになったそうです。
夢の世界は漆黒の暗闇で、その暗闇の奥の奥から白い何かが見えるんです。
それは日に日に大きくなって一週間くらいが過ぎた頃、その白い何かが筑地さんにははっきりと分かったと言ってました。それは白いワンピースを着た一人の女性だったんです。白いワンピースを際立たせるかのように黒く長い髪の毛を垂らして、女性は映画の貞子のように這って近づいて来るんです。
でも、その白いワンピースを着た女性はそれから一日また一日と過ぎていくうちに今度は段々と黒くなり、対照的に暗闇は少しずつ明るくなってきて、回りの景色と言いますか、ワンピースの女が現れた場所がはっきりと見えたって言うんです。
それは……女性の性器だったんです。身長が五~六メートルもあるような巨大な女性がまるで分娩台に乗ったかのように大きく股を広げて、陰部という扉から出て来ていたんです。
筑地さんはそれが分かった瞬間、急に体が動かなくなって……
と思ったら、あれほどゆっくり近づいてきていた白いワンピースの女が完全に得体のしれない黒い塊(かたまり)に変わり、急にズンズンズンズンと早く動いて来たんです。
感覚的には一メートルくらいだと言ってました。そのくらいの距離になると、またゆっくりと近づいてきて、そうして目と鼻の先まで来ると、だらりと垂れた長い黒髪が筑地さんの顔に触れました。
筑地さんはもう逃げたくて逃げたくて、心はガタガタと震えて、でも金縛りは解けなくて……
助けて、助けて……
そう祈り続けていた時、その黒い塊がパッと動いたんです。
目の前には生首……
母親の不気味に笑う窶(やつ)れた顔が……
ワアアアアアアアッ……
筑地さんは寮全体に響き渡るほどの絶叫をあげ、同じ寮に住む人達が駆けつけたときには、放心状態だったそうでした。
それが切っ掛けとなり、筑地さんは仏門に入る決心をされたそうです。
「怖いのはもちろんですが、父親が亡くなるまでは本当に愛情深い優しい母親だったんです。考えてみれば、可愛そうな人なんです」
「でも、今はもう成仏されてますよ」
と、私が言うと、
「いえ、それは絶対にありません」
「どうしてですか。こんなに供養されているんですから」
「ちょっとでも気を抜いたら、私はあの黒い子宮に取り込まれてしまいます。今でも視線を感じますので」
その言葉と口調を聞いたとき、仏門に入られたのはお母さんから逃げるのではなく、ましてや供養するためでもない。遣るか遣られるか、魔物になったお母さんを自分の手で祓い殺すためなんだ……」
そう思ったお話でございました。

                             終わり

 

得点

評価者

怖さ鋭さ新しさユーモアさ意外さ合計
大赤見ノヴ201716171989
毛利嵩志1551551555
吉田猛々201918161992
合計5541493853236

 

書評:桂正和
なぜ、子宮だったのか。
が、父の死と
結びつきずらいですが、
入り口はリアリティがあって、
人怖の様に思えるし、
最後まで“怖み”を感じて読めました。
映画になりそうな内容です。
後半。
もし、本当なら、かなり怖いですが、
リアリティ無くなった印象になってしまいました。
そこが残念ですが、このお話も、
最後の落とし所は、刺さりました。

書評:毛利嵩志
怪異が黒い子宮であること、それゆえに仏門に入った主人公の深い業を感じます。長い文章で特に前半は家族の状況説明が続きますので、先を読ませるために、後半に訪れる展開を冒頭でもっと示唆できればさらに良いかと思います。

書評:大赤見ノヴ
すぐにでも映像化したいぐらいの怖さ、そして怖さだけでなく講談師が喋る様な台詞回しが重苦しい雰囲気で読むのを辞めたくなる気持ちを抑える役目を担っておりユーモアさも加点させてもらいました。優しかったお母さんが愛情の深さ故にお父さんの死を境におかしくなっていく、普通の日常が普通じゃなくなっていくその1つ1つがジメッとしていて、これが日本独特の怖さなんだろうなと再認識しました。1つだけ言わせてもらうならば私は台詞回しを講談師に変換できたのですぐに内容を理解できたんですが読む側の好き嫌いは分かれるかも。映像化する際、お母さん役は大竹しのぶさんでいきましょう!

書評:吉田猛々
怖かったです、というのが素直な読後の感想ですね。夏目漱石の一文から始まり、仏門に入った 人の話という導入から、なんとなく結末を探りながら読み進めましたが、そういう意味合いだったのかと。人生の起伏において人はこうまで変わるものかという恐怖、国内では故人の骨を食べる骨噛み(ほねかみ)という風習がありますが、そのレベルではない変貌していくお母さんの狂気。死者を生者に置き換えて気持ちを保つ、しかしそうせざるを、そうならざるを得なかったほどの突然の喪失、そこに思いを馳せると悲しくもありますね。個人的に「もう一話聞かせて!」とお願いしたくなりました(笑)。