「冬の宇宙(そら)」

投稿者:ひげ

 

普段はナナフシギさんや
ガンジー横須賀さんの
チャンネルに自らの不思議体験や
恐怖体験などを投稿させて頂いて
居る私ですが、この度の
怪奇宴への初挑戦には
普段の投稿怪談とは
少々毛色の違う話しを
投稿させて頂こうと思う…

理由は、私の中で
未だにトラウマを引きずる
今までで一番恐ろしい
体験だったからである

俺は今、
札幌の中でも中心地と言われる
中央区のとある病院の前に
立って居る…
国道230号線、通称石山通り
と呼ばれる通り沿いに立つ
かなり立派な造りの病院

診察を受けに来たのでは無い
今書いているこの原稿に
少しでもリアリティを持たせる為
当時の記憶と擦り合せをする為に
この場所に来たのだ。
恐ろしくも懐かしい記憶……。

この病院は1978年(昭和53年)
の4月、当時の民間病院では
日本で初めての救急病院として
開院した歴史を持つが、
その前年までは
俺達みんなの遊び場
この辺では唯一の広大な空き地
だった、そんな思い出の地の上に
建って居るのが、この病院なのだ

当時のココでは
廃材等を使って基地を作ったり
木と木の又の間に板を敷き
簡易的なツリーハウスみたぃな物
を作って遊んで居た
ココに来れば、近所中の子供達が
顔を合わせる子供達の社交場の
様な場所だった

今にして思えば
ココで遊んだ最後の冬……
恐らく昭和51年の年末近く
クリスマス前後の事だったと思う

根雪になってしまうと
次の年の春過ぎ、初夏の頃までは
自分の背丈より深い根雪で、
遊ぶどころか埋まってしまう
空き地、締め切り前に
追い込まれる様な気持ちで
夢中になって遊んで居た
『遊び』の食い納めか食い溜め
の様な気持ちでw

雪合戦や雪だるまは勿論、
雪の中にジュースを埋めて
シャーベットを作って飲んだりと
雪国では当時は当たり前の遊び

最初から最後まで一緒だったのは
スグ近所に住む南君(仮名)
だった、つい今さっきまで
キャッ、キャッ言って一緒に
遊んで居た南君が
いつの間にか無言になって居る
事に気が付いた俺

気になって、南君を確認すると
冬で日が落ちるのが早くなって
もう真っ暗になりつつある
空をジィーっと見つめて居る

『どうした?』と
南君が見て居るであろう
方向の空を見て
『暗くなったなぁ』
『そろそろ帰らんと怒られるな』
と話しかけるが、
ただジィーッと空を凝視する南君
『本当、どうしたのよ?』と
言い終わらない内の事だった!

随分と暗くなった空、
大きな雲が漂うその狭間に
溶鉱炉で溶かされた金属の様な
濃いオレンジ色の丸い点が
見え隠れしている

雲が動くからでは無い
そのオレンジの点は
ビュッ、ビュッと直線的に
あらゆる方向へ飛んでは
方向転換を繰り返す、しかも
物凄いスピードで飛行機や
ヘリコプター等の比ではない

見慣れ無い色と動きをする
その飛行体に俺も
しばし見とれてしまった
『アレかー?』と聞くと
上空を向いたまま
大きくうなずく南君だった

どうやらその
小さな点に見える飛行体は
3基存在している様で、
まるで子犬がジャレ合って
遊ぶ様にくっついたり離れたりを
激しく繰り返して居る
雲に隠れたり、不意に姿を現したり

やがて近付いて来た
大きい雲に飲み込まれる3つの点
『見えなくなったなー』
『あれUFOなのかなぁ?』
『初めて見たわ!』
と興奮する俺と南君の2人

何とかして
またみつけてやろうと
必死に雲を睨む2人
やがてその
大きな雲が流れて行くと
その雲の切れ間から
姿を現したのは……

先程より
はるかに大きな点
いや、もうソレは円だった
熱した金属の様な
オレンジの発光も更に強く
なった様に感じる…
『やっぱアレUFOなのかな?』
『デカくなったよな、合体した?』
子供っぽぃ考えかもしれないが
他の考えなんて思い浮かばない
2人で出した答えは
『合体』だった…

大きくなった円の動きは
小さい点だった時と遜色無い
激しい動きを繰り返す

『おや?』の俺の声に呼応する様に
大きな点は高度を下げ
コチラへ向かって来て居る様に
見えた『コッチ向かって来て無ぇ?』
俺の問に『来てる、来てるヨ!』
南君が答える

さっきまで雲と同じ様な
高さを飛んで居た大きな円は
アッ!と言う間にヘリコプターが
低空飛行する様な高さか
背の高めのマンション程度の
高さまで降りて来た

『怖いな』
『なんかヤバくねぇ?』
警戒しながらも
その場に停止した円に
目が釘付けになる2人
『やっぱUFOだよなー』
『絶対そうだよ!』と
改めて納得したその時だった!

俺の視界のすみっコの方に
人影の様な物がスッと流れて
落ちて来た様な気がした
流れる?
そう上から下へ
丁度流れ星の様に…
スッと…『え!』
目の錯覚なのか辺りを見回して
確認する俺だったが、『ん?』
大きな木と木の間の地面に
さっきの人影の様なものが見える
『なぁ、なぁ、アレ!』と
指を指して南君に知らせる

ソコに立って居たのは3体
のヒトガタで
よく言われるグレイ、
リトルグレイとは違う雰囲気
むしろ、最近またYouTubeや
イベント等で騒がれている
甲府事件の『甲府星人』に
似たシルエットで
耳の延長なのかある種の
アンテナなのか?
尖った2本のツノ状のものが
頭の両サイドから突き出て居る
のが見て取れた

しばしの間の睨み合い…
と、言うより蛇に睨まれたカエル
の様な、動く事は勿論、
目線をそらす事も出来無い状態で
『ゴクッ』っとツバを飲む音すら
ハッキリ聞いて取れる位の
静けさと緊張……
そんな時間はエラく長く感じた

辺りは既に真っ暗
空き地なので当然灯りなんて無い
興奮と恐怖、そして寒さで
身体はガタガタと激しく震える
『ヤバくない?』
『逃げるべ!』と
言うやいなや
3体のヒトガタが
スゥーッっとこちらへ
近付いて来る

足は動いて無かった
まるで足の裏にホバークラフト
でも付いて居るかの様に…
足を動かす事無く
ホバリングしながら
こちらへ向かって進んで来るのだ

戦慄…!
『うわぁー』どちらとも無く
悲鳴が上がり、その悲鳴にすら
ビックリして走り出す2人
一応立入禁止の為、建て前的に
空き地の周りを囲む波鉄板の塀
が行く手を阻むが
その継ぎ目を蹴りまくって
隙間を開けソコをくぐり
もんどり打って
空き地から飛び出る

もう、
後ろなんて振り向く余裕は無い
通り掛かる家と家の間の隙間
そして暗がりから
さっきのヒトガタが
出て来る気がして…
走って、走って、走った

恐怖心から
街灯で明るめの道を通ると
自然と近くにある
我が家へ向かって居た

小路の暗がりに家がある
南君には悪いが…
とてもじゃ無いが
そんな暗がりに
向かう気にはならなかった

半ベソをかきながら
我が家へなだれ込む
ガタガタと震え、ベソをかく
2人の様子に
『アンタがた、どしたのサ?』
北海道らしぃ訛りでお袋が訪ねる
シドロモドロで声にならない声
言葉にならない言葉の2人を
心配そうに覗き込みながら……

『まぁ落ち着きなさい』
そう言いながらあったかい
甘酒を出してくれたお袋
もう外になんて出たくは無い俺に
『南君一人で帰すなんて』
『可哀想な事するんでないヨ!』
と、俺を鼓舞するつもりなのだろうが
地獄へ叩き落された様な気分だった

甘酒のお陰か
少し気持ちも落ち着き
暖まった俺と南君
『家に誰か居るの?』と聞くと
『お母さんと婆ちゃん居る』
と、南君
『そんじゃ家まで送ってく』と
また2人で連れ添って
我が家を出た……

我が家を出て
向かいの細い路地へ入って
四軒目位にある南君の家
心細い足取りで向かう2人
柄にもなく手を繋いで…w

細い路地へ入って行こうと
した時だった
南君の家の隣にある
廃墟と荒れた庭……
その上空からまたヒトガタが
サーッっと降って来たのだ
今回は飛び降りて来る所から
南君も見てしまった様で
繋いだ手からも震えが伝わる
勿論、俺も怖くてチビリそうだった

廃墟の影から
うごめくヒトガタ達の影
頭のツノの形までも見て取れた
俺達に対して
手を伸ばして来たその姿は
俺達2人を捕まえようと
している様に見え
未だにトラウマになって
しまう程の恐怖の光景だった

『うぉー!』
ドチラからともなく
発せられた悲鳴
今、歩いて来た
我が家の方向へ
ダッシュで逃げる2人
玄関を閉める事も忘れ
再び家へとなだれ込む
『なんなのー?、アンタ達』
『玄関も閉め無いでー!』
と少々キレ気味のお袋だったが…
今度は本気で泣きじゃくる
2人の様子に、スッカリ
困り果ててしまうのだった。

『いやー、困ったモンだねぇ』
と、考えた挙げ句、
一度は家に電話位入れないと
お母さん達が心配するからと
南君に家へ
電話を掛ける様に
指示するお袋
『お袋、ナイスアイデア!』
と、言う気力はその時
無かった俺だが
心の声はそう言って居た
……と思う

何故か
ベソをかきながら
電話を切った南君に
『どうだった?』と聞く
『お兄ちゃんが出て、テメェ
良いから早く帰って来いや!
だってさ』と、更に
ベソをかく南君だった

その話しを聞いて
再度、お袋が電話を掛けた、
今度はお母さんが出た様子
『スミマセンねぇ、
今ご飯支度で火を使ってるから』
『火を切ったら
私が連れて行きますから』
そう言って電話を切ったお袋
『火が止められる様になったら
3人で一緒に行きましょ』
そう言ってソソクサと台所へ
戻って行った

お袋が一緒に
行ける様になるまで
ソワソワして落ち着かない俺
家の窓をそーっと開き
家の前の状況を確認すると
ヒトガタは既に居ない様だった
『さぁ、もういいよ』とお袋が
防寒着を羽織ってやって来た

3人で玄関へ…
いち早く靴を履いた俺は
玄関の扉を少しだけ開き
ソコから顔だけ出して
周りの様子を確認する
やはりもうヒトガタは
そこら辺には居ない様だ
安全を確認し扉を開く…

『あッ!』と
南君と顔を見合った
『お母さん、見て見て
早く見て!』と
上空を指差す俺
『ど~れ』と見上げるお袋

なんとソコには
先程の大きな方の円盤が
まるでコチラの様子を伺う様に
佇んで居たのだった
『アラ、ちょっと~、ヤダー』と
一番興奮して見ていたのは
お袋だったw

時間にして1~2分だったろうか
やがてスゥーッっと
藻岩山と言われる山の方へ
飛んで行き、姿を消した円盤
(ちなみにこの藻岩山
UFOの基地があるなどとの
噂もある札幌市内の山です)

そうして3人で
南君の家へと向かい
南君を無事に送り届けて
家へと帰ってきたお袋と俺

最近はスッカリ
生意気な言葉遣いを覚え、
エラそうな悪ガキだった俺も
この日だけはスッカリ子供に
戻り、そばにお袋が居てくれる
有り難みを感じた夜だったが
この夜以後、時々予知夢
と言うか正夢を見る様に
なってしまい
何度もデジャヴを体験する事に
なってしまった…。

そして
この話しには
続きと思われる体験もあるので
もう少々お付き合い願いたい

あの円盤とヒトガタによって
体験した恐怖の一夜から数年後…
俺はもう中学生になって居た
その日は
初めての学校祭の準備が
遅くまで掛かってしまい
ちょっと暗くなってから
一斉下校となってしまった

2、3年生達は
中島公園と言う札幌市内の
大きな公園側、
市電のある通り沿いに玄関があり
そちらから登下校するのだが、
俺達1年はその真裏にある
小さめな裏玄関からの登下校
となって居て
狭い玄関は帰宅しようと
1年生でごった返して居た

あの南君とは
中学に入ってクラスも
別れてしまい付き合う友達も
別々になってしまった為
久々に玄関で顔を合わせた

俺はクラスメイト達と
玄関を出てスグの道を
南君もまた自分の
クラスメイト達と車道を挟んだ
向かい側の歩道を
並行する様に進んで居た

そんな時だった…
『なぁ、アレUFOじゃねぇ?』
誰かが叫んだ
上空を確認するとソコには
あの溶鉱炉で熱せられた金属
の様な濃いオレンジに発光した
小さな円盤が今回もまた3基
物凄いスピードで
飛んで居たのだった
『飛行機じゃねぇの?』
なんて奴も居たが
『あんな早い飛行機なんて
ある訳ねぇだろ!』と
皆に否定されて居たw

無意識に目と目が合う
俺と南君の2人
ヤツも思い出したに違い無い
そう思った…。
円盤が飛び去って
暫くした後、そろそろ
曲がらないと遠回りに
なってしまうと言う交差点
まずは俺が横断歩道を渡る
その姿を見た南君が
急ぎ足でコッチへ来る

『やっぱアイツも怖いんだな』
そう思ったがそれを口に
出す事はやめておいた
俺も怖かったしw
結局、家の近い2人が
久々に一緒に帰る事となった

『いや~思い出すよな~』
『あ~、思い出すな』
『なまら怖かったもんな~』
『本当、ヤバかったな』
そんな懐かしい話しで
ほのぼのと……
なんて事は無く
むしろ当時の怖かった
記憶を思い出してしまい
ビクビクしながら急ぎ足で
帰宅を急ぐ2人

家と家の間の暗がり
裏道の様になった小路なんかは
特にキョロキョロと
せわしなく確認して歩く2人

もう我が家の玄関前
急いで玄関の扉を開けて
『ただいま~!』と
珍しく大きな声で
帰宅をアピールした俺
『はい、おかえり~』と
お袋の声を聞き、
一安心してドアの前の
南君に目をやると
コワバッタ表情で佇んで居る
『どうした?』と
外へ目をやるとソコには
あの日見た
大きい円盤の姿があった
あの日と同じ様な位置で
まるでコチラの様子を伺う様に…。

『上がってくか?』
明らかに怖がって居る南君に
気を使って尋ねる俺、
『う~ん』と気の無い返事
南君に理由を尋ねると
最近パートを始めたお母さんの
代わりに飼って居るペットの
犬達の世話をしないと叱られる
との事だった
正直『面倒くせぇ~』と
思ったが、困った顔をする
南君を見て居られず
『じゃ家までイッちゃるよ』と
再度玄関を出た

前回、ヒトガタが居た
廃墟の前を入念に見回し
誰かの目線を感じながらも
走る様に南君を家へ送り届け
ホッとしたのも束の間
1人って事に、急に心細くなり
恥ずかしい位の猛ダッシュで
帰宅したのでした。

ところで
先の体験以後、予知夢
デジャヴを良く見る様に
なった事をお伝えしましたが
同じ頃から、
何かして居る自分を
上空から俯瞰で
見て居る様な幽体離脱
の様な体験も始まり
そんな体験を
投稿させて頂いた事も
ありましたが……

ここ数年
今の住まいの窓の外に
ヒトガタ…
つまりは宇宙人が立ち
俺を待って居る、と言う
夢を時々見る事があるんです
恐怖に引きつり
絶対にイヤだと思って居るのに
意思に反して
自ら窓を開け身を乗り出す俺
そして眼前に迫る
巨大な円盤……。
余りにリアルな映像の夢で
何度飛び起きた事か……

飛び起きると言えば
最近五十肩の激痛でも
深夜から朝方に目を覚ます
事があるんですが
先日の深夜、
肩に湿布を貼って
一服して居る時に
窓の外から白ぽぃ手が
俺を手招きするって
体験をしまして……
その体験だけを霊的な
恐怖体験としてピンポイントで
投稿した事もあるんですがw

その手招きする白い手が
霊的なモノでは無い方と
考えたら……

今となっては
トラウマに影響を受けた為に
見てしまったただの夢で
予知夢で無い事を願うばかりです

以上、私の最恐体験!
霊的な投稿と
事件系の投稿が多い私ですが……
実は自分自身は
UFOや宇宙人が一番の恐怖
と感じて居る
そんな体験談でした。

 

得点

評価者

怖さ鋭さ新しさユーモアさ意外さ合計
大赤見ノヴ171515161679
毛利嵩志1051015545
吉田猛々171718182090
合計4437434941214

 

書評:毛利嵩志
子供のころに見たUFOらしきもの、そしてそれに関連している(?)ヒトガタの話です。家族とのやり取りがユーモラスで良いですね。恐怖心よりそっちの方が強く印象残るのが残念ですが……。

書評:大赤見ノヴ
さすが普段から投稿されているだけあって文章力が高い!そして宇宙人と遭遇したご自身の少年時代のエピソードというエキセントリックな内容、舞台は日本だけど古き良きハリウッド映画のような展開に心躍りました。ただ、宇宙人との遭遇話という特質上ある程度色々な映画を見ていると突き抜けてこなかったです。ジャンルはなんでもありなのですが人の情念、恨み、呪いなどの「怪談」の持つ怖さとは少しベクトルが違うので加点しづらかったです。ただ文章力、構成力、そして漂うユーモアさどれをとってもトップクラスなので私的に今後に期待させてもらいます。

書評:吉田猛々
まず何より「現場からお届けしている」、という冒頭に心を掴まれましたね。そして内容が日本版のフラットウッズモンスターというか、総じてこれはとても貴重なUFOとの第三種接近遭遇レポではないですか!?思わず興奮してしまいました(笑)。投稿ジャンルは自由なので、こういう角度の違うご自身の最恐体験を投稿していただけた事、個人的にとても嬉しく思います。遭遇譚だけでなく、最近のご自身の近況も交えつつ、過去の出来事が紐づいているラストもとてもワクワクしました。そして雪の中にジュースを入れての雪遊びなど、その土地の細かい習俗を知る事が出来るのもよかったと思います。