「霊感。」

投稿者:Hachi

 

この話は、私が大学3年生の時に実際に体験したお話です。

あの日から誰にも話していなかった出来事。
心の奥底にしまい込んでいましたが、今も全てが鮮明に残る記憶です。

私は大学2年生の時にバイト先で自殺のご遺体を発見してからというもの、その出来事がキッカケで霊が視えてしまうようになり、声を聞いたり、不可思議な体験に悩むようになりました。
私は自分が霊感体質になってしまったことを自分自身でも信じたくない状態だったため、人に話すことなどできませんでした。
話すのが恥ずかしいのもあったし、信じてもらえるとも思っていなくて人に話すのが嫌だったのです。
『霊感がある』というと、嘘だと思われたり、変な目で見られたり、または私に何か憑いてる?と聞かれるのは容易に想像ができ、誰にも話す事が出来ませんでした。

そんな日々を過ごす中、同じ大学に通うAと大学3年で講義が一緒になったのをキッカケに仲良くなりました。
Aは一緒に居ると時々、突然?きゃっ!!?とか?うわっ!やば!あー、びっくりしたぁー?などと言う事があり『どうしたの?』と聞くと、理由は必ず幽霊でした。
Aの話では、Aの祖母が霊媒師だったと言い、心霊関係は興味があり、好きな方だと言っていて、Aの母親も霊感は強くないものの勘がやたらと鋭いらしく、A自身も幼い頃から霊感があり、視えてしまうと言っていて、一時期は祖母に後継の候補にと言われて、霊媒師の修業をさせられていたと言っていました。
私はAが幼い頃から霊感があるなら私自身が視えるようになっしまったことも、今後どうすれば良いのかをAに相談してみようかな、と少し悩んでいました。
霊感がある人は、視る・視ないを切り変えられるスイッチのようなものがあると聞いた事があったのですが、当時の私はそれが出来ず、Aならどうすれば良いかわかるかもしれないと考えていて、何から話して良いのか悩みながら、話せるタイミングを見てAに相談しようと思っていたのですが、いつもAが?あそこに幽霊が居る?という場所を見ても私にはそれが視えないのです。
いつもAが指差す所には見えずに、別のAが何も言わない所にはやっぱり視えるんです。
Aは身内にも霊能者が居て、血筋だと言っていたのもあり、突然意味もわからず視えるようになってしまった私なんかよりも霊感が強いのか、私が視えているのとは違う霊がAには視えているのだと思い、Aの言う所に視えないとなると、私が視えていることを話しても信じてもらえる自信もないし、こんなことで相談するのやめた方がいいかな、と思うとなかなかAに相談するタイミングがありませんでした。

それからさらに数ヶ月が経ち、大学3年の夏休みが終わり、久しぶりに大学へ行くとAの背後にピッタリと張り付くように?もやもやとした黒い影?が視えました。
私は『気持ち悪い』と思いましたが、Aは気付いていない様子。
Aはいつも通りで、自分が夏休みの間に体験したという怖い話をしたり、他の霊の話をしたり、後ろのモヤモヤを気にする様子もなく普段通りだったが、私はAの後ろのモヤモヤが気になり、私は何も言い出す事が出来ないまま、さらに数週間が経つ頃には、Aの背後に毎日毎日ずっとピッタリと張り付く影は日に日に濃くなり、少しずつ少しずつその姿が、モヤモヤが晴れるように全体の輪郭が視えるようになって来ていました。

私はどうして良いのか分からず、Aに言う勇気もなかったのですが、流石にどんどん怖くなる?それ?に耐えられなくなり、Aに伝えなきゃ…今日Aに言おうと真剣に思ったある日の朝、大学に着くとAはとても体調が悪そうにしていて、後ろのやつもいよいよ雰囲気から何から全てが怖すぎる、やばい、早くAに言わなきゃ。と思いつつ、その日はあまりにもAが体調が悪そうなのを見ると言い出せずにいました。
私はAの体調が少し良くなってから話す方が良いかな、と思いながら帰った日の晩。
私は夜も遅くなってから寝ようとベッドに入り、ウトウトし始めると微かに『ドアが閉まります』という、マンションのエレベーターのアナウンスの音が聞こえ、半分眠りながらも『ん?部屋の中でなんか聞こえた事なんかないのに…?』と思いながらも眠くてそのまま眠りに落ちました。
そしてその日、夢を見ました。
夢の中の私は見たこともない知らない住宅街に立っていて、目線の先には普通の家のように見える家の玄関の門に『折れた傘、修理します』という文字が書かれた傘を模った看板があり、その横にはあまり広くない小さめな新しい綺麗なコインランドリーがありました。
そこで、40代くらいの女性が私の前に立ち『ねぇ、私の邪魔しないって約束してくれない?』と問うのです。
夢の中の私は『何を?』と聞き返しますが『いい?邪魔をしないでね、絶対に。邪魔しないで。あなた邪魔よ。邪魔だけはさせないから。邪魔しないで、邪魔するな、邪魔だ、邪魔するな』と繰り返し、ふっと消え目が覚めました。
目を覚ました私はこの夢は何だったんだ?と思いましたが、気付けばこの日から目に見えて悪夢が始まりました。

翌日、学校に行くとAはまだ体調が悪そうにしていて、私は『無理しないで帰って休んだ方が良いんじゃない?』と言いましたがAは聞かず、それどころか私にも周囲にも言葉遣い酷く悪態をつき、目つきもまるで前日とは別人のように変わっていて、その日、結局Aはお昼前には誰にも何も言わずに大学から帰ってしまいました。
それからAは大学に来なくなり、私は学校に来なくなったAを気に掛けつつも、だんだんと自分のことに精一杯になりました。

私自身、毎晩必ず夢のあの女性が出てくるようになっていて、毎晩『邪魔だ』『消えろ』と言われる夢でした。
夢の女性は濃いめのグレーのワンピースを着ていて、足元は真っ黒に煤けていて、胸から上は黒く影になっていて顔は見えていませんでした。
初めは私の目の前に立ち、邪魔しないでと言っていただけだったのに、次第に私の足を引っ張って私を無理矢理倒したり、私の上に馬乗りするようになり、私の首を力いっぱい絞めるようになり…
だんだんとエスカレートしていき、苦しくなると、いつも犬の鳴き声が聞こえ、そこで目が覚める、という日々。
起きると感触も残る状態で、喉に痛みが残り、息も苦しくて汗びっしょりで起きる毎日でした。
それと同時に、起きている間の家の中でも昼夜関係なく不可思議な現象が続き、絶対に落ちるわけがないように置いてある観葉植物が地震でもないのに突然落ちて鉢が割れたり、家の中を黒い影がスッと通るのが頻繁に視えたり、気配をビンビンに感じたり、お風呂で髪を洗っていると目の前に立っていたり、リビングでテレビを観ていると脱衣所の方で『パンっ!!』という大きな破裂音が聞こえて何かと思い脱衣所へ見に行くと電球が破裂して割れていたり、真夜中にベランダで『ガシャ!!』と聞こえ、窓を開けると避難梯子の蓋が開いていたり、絶対に閉めたはずのクローゼットの扉が開いていたり、とにかく理解が出来ない事ばかりがたくさん起きていました。

私は恐怖で限界を感じ始め、Aも相変わらず学校にも来ない、電話も出ない、メールも返ってこない状態で、私は誰にも相談出来ない苦痛から、ネットで?霊媒師?を検索しては、色んな所に相談に行って、その度に的外れな事ばかり言われ、明らかに『この人絶対に霊感なんてないわ。お金儲けやな』と感じる胡散臭い嘘つき霊媒師な人達ばかりに落胆し、何も解決が得られないままでした。

そんな日が続いたこの日。
月日はすでに12月中旬でした。
Aからかなり久しぶりにメールが来て、『〇〇公園で17時に会えるかな?』と。
私はAから連絡があったこと、会えるまでに回復したんだと思い嬉しくなり『わかった!』と返信をして、時間に間に合うように公園へ向かうと公園に入った少し先にAが立っていました。
しかし、久しぶりに見たAは信じられないほどガリガリに痩せ、髪は少し離れた距離から見てもわかるくらい抜け落ちたのか減っていて、12月の寒さの中で部屋着のような服で半袖短パン、足元はサンダル。
異様な姿でした。
背中にはあの時よりも鮮明に視えるピッタリとくっついたあの黒い女性。
その女性の首はAの後ろからぐるりと首だけが伸びているような、あり得ない形でAの顔を間近で今にもくっつきそうな距離で覗き込むような形になっていて、ショートヘアの髪はぐっちゃぐちゃに乱れた女が憑いていました。
その女はグレーのワンピースを着ていて、私は『夢の女だ』とすぐに気付きましたが、そこで初めて女の顔が見えました。
その姿はあまりにも怖く、女の目はボッコリと窪み、瞳は窪みのせいなのか暗く黒く見えない、鼻と口は火傷のような傷で潰れていて、ありませんでした。
私はあまりの恐怖にAに声を掛けることも出来ずに立ち尽くして居ると、Aは洋服を捲り上げて、爪を立ててボリボリと顔や腕、胸やお腹を掻きむしり、それは血が出るほどで、前から何度も何度もそうしていたのか古い傷も見えていました。
私は涙がボロボロと出てきて、呼吸がうまく出来ず、でも目の前のAを助けなければとやっとの思いで足を一歩踏み出すと、今までにこの世で聞いたこともないような地を這うような低い声で、何にも反響しないような無機質な音で『邪魔をするな』と言いました。

私は、ブルブルと震え、倒れそうな感覚で意識が遠のきそうになり、膝から崩れ座り込んでしまいました。
その時、強い吐き気と共に、座り込んだ私の体に擦り寄るような犬の感触がありました。
『犬…?』と思うと同時に私は意識がなくなり、気付くと救急車の中でした。
この時、救急隊の人に『もう一人、公園いた友達は?』と聞くと『そんな人は誰もいなかった』と言われ、Aはどこに行ったのか分からない状態でした。
私はそのまま一旦病院に運ばれたものの、どこも悪くないため入院等することもなくタクシーで家に帰りました。
それからAに何度連絡しても再び連絡が取れなくなり、私も恐怖で寝れない日々に疲れ、大学が冬休みに入るタイミングでバイトを休み、実家に帰ることにしました。

私の実家は関西なのですが、この時、不思議なことに関西に帰るとスッと体調が良くなりスッキリしたような感覚に包まれ、ずっと寝れていなかったこともあって実家に着いてすぐ落ちるように眠り、私はそのまま19時間以上寝ていました。
久しぶりに夢を見ることもなく、目を覚まし、これだけ寝てもまだ眠い体を起こし、ベッドに座りこんなに寝たのはいつぶりだろう、と考えながらぼーっとしていると私の体に擦り寄る犬の感触。
あの公園の時と同じ。
公園の時は気付かなかったけど、それは紛れもなく、昔実家で飼っていた柴犬のポロで、大きさ、感触、擦り寄る時のポロの癖、絶対にポロだと確信が持てるほどでした。
実家の犬は私が高校2年生の時に、老衰で亡くなっていて、不思議な現象でしたが私の周りをクルクルと擦り寄るようにしてから、私の背中にピタッと寄りかかるように感じる温もり。
不思議と心地良く、私がポロ?と声に出すと頭の中で遠吠えが聞こえ、聞こえたと同時に背中の温もりが消えました。

翌日。両親が仕事で不在で、私はお昼を食べに出ようと昔から家族で行っていた定食屋さんに1人で向かいましたが、定食屋さんの目の前で、2軒隣のスナックのような雰囲気の居酒屋のおっちゃんにでっかい声で呼ばれ、立ち止まりました。
このおっちゃんの店も昔から家族で行っていた店のひとつでもあったので仲が良く、親戚のおっちゃんのような感覚で付き合いのあった人でした。『久しぶりやなー』と言うと、『待ってた待ってた、ほれ、店入れ。今日は貸し切りやさかい、早よ入り』と言われ、『は?貸し切りってお客さん居てんねやろ?』と言うと、『お前さんが来るからや』と言うおっちゃん。
意味がわからず着いて行くと、席に座るように言われ座ると私の目の前に日本酒と塩。
おっちゃんは『塩舐めて、これ一気に飲みや』と私に勧め、『なんで?』と聞いても『それが先や』と私を急かし、私は言われるがまま塩を舐めると塩なのに苦い、とにかく苦い。塩で感じた事がない苦味で口の中に苦味とイガイガが酷く、日本酒で一気に流し込むと、急激な吐き気に襲われ、おっちゃんに言われるがままトイレに走り、何度も吐き戻しスッキリして席に戻ると『おー、顔が戻ったな』とニコニコと笑っていました。
おっちゃんに話を聞くと、おっちゃんは小さい頃に交通事故で生死を彷徨ってから霊感があるんだと説明してくれ、その話をまったく知らなかった私は驚きましたが、その証拠にと言うのも変だけれど、おっちゃんは事故の影響で片目が光を感じる程度にしか見えず、左半身は若干ですが不自由な人でした。
そして、私が子供の頃から学校での悩みなどお見通しで私にさりげなくアドバイスをくれていたりして、言われてみればそういうことだったのか、という言う感じでした。
おっちゃんはそのまま話を続け、今日私がこっちにくるのもわかってたと言い、『お前さんの周りにバケモン背負ってる子がいてるやろ?』と…
すぐにAの顔が頭によぎり、おっちゃんにAのことを話しました。
すると、おっちゃんは何も答えないまま携帯で誰かに電話をし始め、電話の相手に『ちょっとな、この子と話してくれるかー?』とだけ言い、テレビ電話に切り替えて私の方に携帯を差し出して『話しなさいな』と。
電話の相手は、50代半ばくらいの少しだけふっくらとした優しそうな女性。春子さん(仮名)という人で、普段は和菓子屋さんでパートをしている普通の主婦だけど、知人からの紹介のみで視てるという霊媒師らしかった。

春子さんは、携帯のカメラ越しに軽く挨拶をすると私の話も何も聞かずに、突然、

『言葉選ばずに話すけど許してね。その子な、霊感なんてないやろ?結構…エグいことしてんな。その嘘が招いたんやな』

私は一瞬わけがわからず、春子さんの話に驚きましたが、春子さんはそんなことはお構いなしに話を続けました。

『ハッキリ言うわな。その子、もうあかんかもやわ。その子に憑いてる女がな、今こっち来てえらい剣幕で怒ってはるわ。馬鹿にするな、邪魔するな、わーわーきーきー言うてんねやんか。物凄い怨みやわ。ようこんなになるまで。まったく何考えてこんなことして。あのな、簡単に言うとな、その子が霊感ある視えるって言うからついて来たのにこいつは助けてくれない言うて、怨みまくってその子を一緒に連れてこうとしてるわな。』

意味がわかりませんでした。
さらに詳しく聞く春子さんの話では、Aには霊感などなく、作り話や適当な感覚で霊が視えるって言ったり創作の怪談話をしたり、ふざけた手順の見よう見まねの適当なお祓いのふりなどしてて、その女性の霊に怨みを買ったということでした。
このままだとAが本当に死んでしまう、遠隔ではとてもじゃないが対応出来ないし、そんな一筋縄では到底無理なほど怨んでるし、すぐにAのところに行くと春子さんは言ってくれ、翌日の朝には私が住む関東に行けるように都合をつける、ただそれでも間に合わんかもしらん、と言われました。

そして、翌日。
春子さんと関東に向かう朝、新幹線を待つ駅のホームに居る時に、大学の友人から『Aが家で首を吊った状態で見つかったらしい』と連絡があり、無情にも春子さんの予想は当たってしまいました。
春子さんは『やっぱり間に合わんかったか……ごめんな…でも次はあんたのとこ来るで』と言うのです。

そのまま私と春子さんは新幹線に乗るのをやめ、すぐに春子さんの家に向かい、招き入れられると私は春子さんの1時間以上に及ぶお祓いを受け、護符と水晶のブレスレットを授かりました。

Aに憑いていた霊は、春子さんの話では男性の無差別によるいたずらの放火で逃げ遅れて亡くなってしまい、最初はその犯人の男性を怨み、この世に残り続けていたらしく、それをAが拾ってきたとのことでした。

そして私に悪い夢を見せたり、家での怪奇現象で嫌がらせをしたり、私を公園に呼び出すように仕向けたりしてたのもその女の霊で、Aと仲良くする私が邪魔で排除しようとしていたらしいですが、結果は私が持ってしまっている霊感と私を守る守護霊さんがめちゃくちゃ強いため、勝てずに連れて行けなかった。という話でした。

その守護霊は、私が昔飼ってた柴犬のポロと、私の母が若い頃に流産してしまった赤ちゃん、私の弟になる予定だった男の子が20歳くらいに成長した姿で守るように脇に居る、との事でした。
関西に帰ってリラックス状態になれたのは、守護霊自身がリラックス出来る状態になったからだと言っていました。

そして、毎回夢から覚める時に犬の鳴き声が聞こえていたのは、ポロが霊に向かって威嚇し吠えていたのだという話でした。
さらに、私が霊感が芽生えてしまった理由は、一番最初の自殺のご遺体を発見した時に守護霊である1人と1匹が私を守るように突然バンっと勢い良く前に出て来たことで元々持っていたものが開花してしまったんだろう、という話でした。

私はAの葬儀の日程に合わせて関東に戻り、式に参列し、お棺の中のAに守れなくてごめんなさいと謝りました。
そして、春子さんが言うには、自殺者は死後も自殺を繰り返すらしく、『その長く暗い苦しみから少しでも早く次の道へ旅立てるように』と春子さんから預かった、春子さん自身が糸で編んだ手飾りをお棺の中に入れ、お別れをしました。

私に起きていた夢も不可思議な現象も、お祓い後にはピタッと止まりました。
半年間に渡るAと女の霊との出来事。
私は、無知が故に好きな友人を守れなかった。
後悔し、私は春子さんから霊感のコントロールの基本を学び、周囲を守れる強さを持ちたいと思った出来事でした。

最後に。
後日、とあるキッカケでわかった話。
私が夢で見た傘の看板があった所の、コインランドリーは、火災になった女の霊の家の跡地。そして、Aと待ち合わせた公園の目の前でした。
Aはなぜ、霊感があるふりなどしたのかは、今となってはわかりません。
さらに、Aの祖母は霊媒師ではなく、身内にそんな霊感を持った人も居ないという。
Aは霊感に憧れていたのもしれません。
みなさんも霊感に憧れますか?
そんなもの、ない方が幸せです。
そして、居ないと願いますが霊感があると嘘をついたり、視えるフリはくれぐれもお気を付けてください。

 

得点

評価者

怖さ鋭さ新しさユーモアさ意外さ合計点
毛利嵩志15151051560
大赤見ノヴ191918151889
吉田猛々191815161684
合計5352433649233

 

書評:毛利嵩志
テーマとしては目新しいものではないですが、霊感持ちの人物が次々出てくる展開は以外になく、最後に裏切りもある。一番良かったのは、女の霊の執念が行間から漂ってくるような強い雰囲気でした。

書評:大赤見ノヴ
まず憑いてきた霊が理不尽ではないんです。助けて欲しかったのにAが嘘ついてたから怒っている。そしてその状況を教えてくれたのが所謂、霊能者ではない。なんでしょう・・・リアルなんですよね。文章の構成力も抜群に高くて襲い来る恐怖と明かされる真実が怒涛の様に迫ってきて疲れました。最後のオチが注意喚起なのも良いですね。なんでしょう…ある種の完成形を見た感じになりました。素晴らしい。

書評:吉田猛々
夜中に一人で怪談本を読んでいる時のゾクゾクするような感覚を強く覚えましたね。怖いけれどつい読み進めてしまうよう、魅力ある内容でした。虚飾なく事実を淡々と伝える語り口も逆に印象的で、エレベーターのアナウンス音や傘修理の看板などもリアル感を浮き立たせ、不気味さを彩っており、いい意味で「ザ・実話怪談」という趣を放っていたと思います。