「嗅覚」

投稿者:超常現象好きのウィンチェスター

 

 この話は私の友人の上司が体験した話で、文章化するのが難しいので私が体験した様に書かせていただきます。

 この話はちょうど20年前、当時18歳だった私は毎日の様に友人達と遊び歩く毎日だった。本来あってはならないことだが、未成年で飲酒喫煙、街に繰り出しては初見の女性と遊びたいがために軟派をしたり、いろいろな褒められない遊びを友人達としてきたが、そんな私達が1時期流行った遊びが心霊スポット巡りだった。友人Aが車の免許を取得したばかりということもあり、その日はAの車に私とABCの計4人で心霊スポット巡りをする事になった。
 Aはコンビニで購入した心霊スポットが記載されている雑誌を参考に地元から片道2時間かかる地方にある心霊スポットを目指して車を走らせた。
 その心霊スポットは山の中にある廃トンネルで雑誌曰く車で通るとルームミラーに居るはずの無い人が座っていたり、車の速度に追いつく速度で老婆が追いかけて来たりなど心霊トンネルなら有りがちな内容だった。
 向かっている道中は4人でくだらない話しで盛り上がったり、高速のサービスエリアで騒いだり、女性だけで休憩しているグループを軟派したりして心霊スポットに行くというより私にとってそんな時間がすごく好きで、その時間を楽しむために心霊スポット巡りをしていたと言っても過言では無かった。
 私「なんだかんだ言って俺ら結構な数心霊スポット行ったけど、結局一切怪奇現象とかって起きないよな。」
 B「まぁ心霊スポットって言ったってテレビにある様な事なんてぶっちゃけ起きないもんなんだよwww」
 A「幽霊居たって俺ら全員霊感無いし気付かないだろww」
 C「実際見えない幽霊が着いてきたって俺の家には仏壇とか神棚あるし絶対大丈夫だわ!」
 私「どんな自信だよw」
 そんな会話をしながら目的地のトンネルを目指して向かっていたが予定だと2時間かかる片道も3時間以上かかり、当初の予定時間より長くなったが、そんな道のりなんてあっという間で、もう少しで到着する頃、辺りには民家も街灯も無い、落石注意や熊の注意などの標識のみになり山道を車のヘッドライトのみが灯りを照らす様になっていた。
 C「雰囲気がらしくなってきたじゃん!」
 みんなでテンションが上がってはしゃいでいた頃。
 A「あ!あのトンネルじゃね?」
 とうとう目的地のトンネルに到着し、トンネルの前で車を一旦停止し、周りに私たち以外に人が居ないことを確認して、ハイテンションのCが「宇宙天地なんちゃらかんちゃら」と鬼の手を持つ教師の少年漫画の真似をしたりして、そのまま車を徐行しながらトンネルに入った。トンネル内は真っ暗闇で周りは何も見えず、ヘッドライトがある正面のみに落書きなどが見えるだけだった。
 私「なんかあった?」
その他「いや、何も無いわ」
 そして次は車を端に寄せてみんなで歩いて往復することになった。
 サービスエリアにあったコンビニで1人1個懐中電灯を買っていて、それを持ってトンネル内に徒歩で入って行った。
 中に入るとゴミがポイ捨てされていたり、壁などには辺り一面に暴走族などが落書きをしていて、そんな壁などを照らしながら往復した。
 私「なんかあった?」
 B「やっぱり何も無いわ!スリルはあったけど収穫無し!結局心霊スポットとか言うけどこんなもんなんだよな〜」
 そんな事を言いながら車に戻ろうとすると、Aが1つの提案をし出した。
 A「じゃあさ、ジャンケンで負けたやつ1人で往復しようぜwww」
 その提案にBCが「それめちゃくちゃあり!俺らみんなで入ったから何も起きなかったのかもしれないし、ジャンケンしようぜww」っと乗り気になったが、正直私は1人で入るのは怖かった。しかし、ここでビビっていると周りにバレるのは1人で往復するより嫌だったため「おぉ!いいよ。」と意地を張り、自分も乗り気の振りをしてその提案に乗った。
 正直ジャンケンにさえ勝てれば良いだけの話だと自分に言い聞かせ全員で「最初はグー!ジャンケンポン!」としたら、そういう時に限って私が1人負けをしてしまった。
ABC「はいっ負けー!ww1人で行ってこいよwww1人は怖いぞ〜幽霊に襲われても俺ら助けない〜」などと3人が爆笑しながら茶化してきた。正直本当に1人は嫌だったが私は「わかったよ。行きゃいいんだろ行きゃ!どうせ何も起きないしな!」と意地を張って1人でトンネルに入って行った。
 今思えば、その時意地を張らずにビビってると3人に言ってやめておけば良かったと後悔している。私はこのトンネルで初めての心霊現象を体験する。
 トンネル内は4人で入った時より何倍も雰囲気があり何倍もトンネルが長く感じ、落書きの1つ1つが顔に見えたり、落ちてるゴミなどが人の生首に見えたり、この世の者じゃ無い者が突然後ろから追いかけてきたり、正面から追いかけてきたら私は確実に終わるなどと想像をして、イメージが膨らみ怖すぎた。しかしトンネル入口には3人の会話や笑い声が響いていて、それがなんとか足を進める希望になっていた。
 3人の声がだいぶ小さくなってきたころ目の前にはトンネルの出口が月明かりに照らされ、かまぼこ状に見えた。もう少しだからそこまで歩いて行って帰りは走って帰って、3人に幽霊がいた!と嘘をついてやろうと考えながら歩いてい頃、信じられないものが目に入ってしまった。つむじからつま先にかけて電撃が走り足が止まった。
 トンネルの闇の中にライトも当てていないのに、そこに白い服、白いスカートを着た髪の長い女性が蹲っている。
 (まずい、本物だ、逃げなきゃ)
 そう思ったが体が動かない。
 金縛りだ。目がその女性から離せない。体から変な汗が流れてきたその時、その女は肩を振るわせているのに気がついた。笑っている?こんなトンネルの中で笑っているなんて普通じゃない。恐怖に飲まれ今すぐにでも泣き出しそうになっているとき、その女性の肩の震えが笑っているのでは無く泣いているのだとわかった。
 なぜこの場で泣いている?もしかすると幽霊では無く普通の人間で道に迷ってしまった。若しくはこのトンネルの奥に民家があり、何かしらの事情でここまで来て泣いている。そんな訳のわからない理由を自分に言い聞かせてこの女性は幽霊では無いと自分に言い聞かせた。そうする事によって安心したかった。そんな事を考えていたら体の緊張が少し解けて金縛りが無くなっていた。
 私は勇気を振り絞り、1歩1歩とその女性に近づき、「あの?大丈夫ですか?」と声をかけたその時、ハッと我に返った。私が話かけているのは蹲っている女性では無く、地面に落ちている女性用の白い服に白いスカートだった。それが泥などで汚れていて白では無くなっている。ついさっきまで女性が蹲っていたはずなのにそこには服とスカートのみが落ちていた。さっき車で往復して、その後ABCと4人で歩いて往復したが女性の服とスカートが落ちていたら必ず目に付くし、絶対それに対して4人で話した筈だ。だとしたらさっきまでは落ちて無くて、人が通った訳でもないのにこの服とスカートが落ちているのはおかしい。また私自身に恐怖が襲ってきたその時、トンネルの出口の方から女性の啜り泣く声が聞こえ、トンネル内にé!
��き渡った。
 私「うわぁーー!!」
 私は3人の元へ全速力で走り出した。
 トンネルを出た私は3人を無視してそのまま車の中に飛び込んだ。そんな私を追いかけて3人が入ってきて何かを言っているが必死すぎてその時どんな会話をしたかハッキリと覚えていない。多分3人が「ビビらせんなよ。」とか「何があった?」とかそんな事を言ってきたと思うが、私は必死すぎて「早く車出せ!!」と怒鳴り散らかしたと思う。
 そして車を出発させて街の明かりが見えた頃、私はやっと落ち着きを取り戻し今あった事を3人に話したが、3人とも信じてくれず私がドッキリを仕掛けてると思われてしまった。
 その日は何事もなく無事Aの家に着きその日はAの家に泊めさせてもらった。
 しかし、その日を境に異変が起きるようになった。
 その異変とは街を歩いていると不意に生臭さが鼻を刺すようになった。その生臭さは若干生臭い時もあれば物凄く生臭い時もあり、電車に乗っている時に物凄い生臭さがあると気持ち悪くなり、車両を変えないと乗っていられないくらいになってしまった。
 病気になってしまったのかと思い耳鼻科に行ったこともあったが異常無しと診断された。この生臭さが何なのかわからない日が続いていたある日、いつものように友人達と集まり行きつけの居酒屋にいると、いつも遊ぶメンバーの中にはよく3人の女友達がいて、そのうちの2人は俗に言うギャルで派手な格好にハイブランドを身に纏っている。当時の私たちにとってはその2人が魅力的だった。しかし、その2人が生臭いことに気がついた。1人は側にいると物凄く生臭い、それをI美。もう1人は側にいると若干生臭い、それをK子とする。
 私はK子も臭いとわかっていたが、特にI美と仲良かったため、物凄く臭いのでつい言ってしまい「I美お前めちゃくちゃ臭いぞ。なんでそんな生臭いの?」と言うとI美は「は?なにが?」と自分の体を嗅いだ素振りをしたが少し怒った様子だった。しかしとてもじゃないが耐えられず、周りにいるABCなどにI美とK子が生臭いと言うと3人とも「全然臭くないけど?香水の臭いしかしないよ。」と言ってわかっていない様子だった。私はその場の空気を悪くしないためその2人とは必要な会話をする時以外距離を置き唯一臭くない女友達のところに居た。
 ただ街を歩いていて臭いのはまだ我慢できるが友達も生臭く感じてしまうのは流石にしんどく、なぜ私だけが生臭さを感じるようになってしまったのかわからないまま月日が経った。そして、ある日、その生臭い人間の共通点を知る事になる。
 それは大体25歳くらいになったある日のこと。
 私は鼻を刺す生臭さに慣れて普通に暮らしていたが、私たちはそれぞれが就職して前みたいに毎日のように友達で集まるというのが減ってきていた。しかし年に何回かは全員で集まりお酒を飲む日があり、その時に酔っ払ったI美とK子から暴露話を聞いた。
 I美「私とK子さ、もう辞めてからだいぶ経ったから言うけど、実は昔売春しててさ、当時は体よりお金が欲しかったから全然できたけど、本当よくやってたわ。」呆れたようにそんな話しを聞かされたが、それ以上に2人は俗に言う本番行為を避妊無しで行い、中に出したら通常より何倍も稼げるという危険な稼ぎ方までしていた。
 どうりで金持ちだった訳だと思った矢先、実はK子は1度妊娠してしまい、中絶経験があり、I美は3回妊娠して3回とも中絶を行っていたということがわかった。
 その時、私は気がついてしまった。それは生臭いにおいを出してるのは決まって女性だということ。そしてこの2人の発言からするに、中絶をした女性が生臭くなり、その数に応じて臭いの強烈差が増すんだということ。良く遊ぶ女友達は3人いて、I美とK子じゃないもう1人はギャルや私たちとも仲良くしていて、ヤンキーの素振りはしていたがその子自体根がしっかりしていて、物事の良し悪しを良くわかっていた。その女性は普通に生臭くなく、そこで生臭い人の共通点がハッキリとわかった。
 それを知ってから数年後、私は交際していた生臭くない女性と結婚をして、妻は妊娠をしていて、安定期に入る前ではあったが、相手車両の居眠り運転により交通事故にあってしまい、妻の命に別状は無かったが残念な事に初めての子供は流産してしまった。当時妻はすごく落ち込み、私もショックが大きかったが妻は生臭くならなかった。
 それらを踏まえると生臭い女性の共通点は自らの意思で中絶をした人だということ。
 トンネルで遭ってしまったあの女性の霊は生前お腹に命を宿し、何らかの経緯で中絶しなければいけなくなり、その罪悪感からあのトンネルの近くで命を絶ってしまった人なのかなと、そしてその無念が晴れる事なく今でもあのトンネルでずっと泣き続けているのではないかと私は考えている。
 そして現在2人の子宝に恵まれ、2人とも娘だが、親子だからと言って恥ずかしがる事なく、たとえ娘に「お父さん気持ち悪いよ、そんな話ししないで。」と嫌がられようとも、女性は受け身なんだと、自分の体は自分で守り本当に好きになった人と交際しなさいと性教育をしっかりして、些細なことでも隠さずすぐ相談して貰えるような父を目指している。
 娘が生臭くならない為に。

 以上が友人の上司が体験した話しです。

 

得点

評価者

怖さ鋭さ新しさユーモアさ意外さ合計点
毛利嵩志101012101052
大赤見ノヴ151716151679
吉田猛々181718161887
合計4344464144218