「鍾乳洞」

投稿者:従業員2名副代表取締役☆ナイト ユタ☆の体験怪談

 

鍾乳洞でおこった出来事

人は、意外と思い込みで、生きている

記憶というものは、
割と自分の都合よく、
捻じ曲がっているものである
真実は如何に…

二十歳の若かりし頃、
免許取りたてで、
色んなところをドライブしていました

かれこれ21年程前になります
友達三人と夜中に鍾乳洞に行きました
怖いもの見たさもあったのです

すると、同年代くらいの方が、
二人で鍾乳洞に来られていました
歳を聞くと、同い年でした
若かった僕らは、おふざけ半分、
興味本位で、色々突っ込んだ話まで、
聞いたのです
こんな所で同い年の方に会う、
ちょっとした縁にも
気分が高ぶっていました

美作大学の学生さんで、
なまりがあったので、出身を聞くと、
高知から出て来た方々でした
地元が一緒で付き合うようになった、
カップルでした
地元の大学の友達が、
サークルで遊びに来たらしく、
その話しを聞いたので、
気になって来てみた、と言っていました
さすがに二人で入るのは怖くて、
三十分くらいは、
たじろいでいたそうです

大学行ってない僕らは、
羨ましいなぁ、とか言いながら、
一緒に入ってみようやぁ、
という流れになりました
先陣切るから、
後から着いてきたら良いよ、
という事になったのです

携帯の光だけでは薄暗く、
奥まで行くと、
なんだか心許ない感じがしました
目を凝らして前を見ていたので、
全く気がつかなかったのですが、
ライトとか持ってきてないよな?と、
振り向いて尋ねると、
二人は、いませんでした

後ろから来てた友達二人に尋ねても、
知らん間におらんかったと、
言ってました
と、いう事は、途中まではいた、
という事になります
最初からいなかった、
とは言わなかったので…

一回戻ってみる?と、
話し合っていると、急に、
更に少し奥のところで、
ドボーンドボーンと、
水に飛び込んだような音がしました

慌てて奥まで進み、
地底湖のところに着きました

波紋がたっていて、
少しブクブクと泡立っていて、
まるで、
何か沈んでいってる気がしました

しかし薄暗い光と、結構な落差もあり、
調べに行く気には、到底なれません

あの二人、俺ら追い越して先に行った、
なんてことないよな?
そんなことを話し合っていたのですが、
とりあえず、出ようとなりました
なんだか良く分からない状況で、
もの凄く不安にかられ、
ぞわぞわしていました

表に出てみると、車は二台あり、
自分らの車と、少し離れた場所に、
もう一台
あぁ、来た時は気付かなかったけど、
先客がいたんだな、と思いました
だってね、先程の二人は先に帰ったと、
思ってるわけですからね

何気なく、
車のナンバーが目に入りました

高知ナンバーです

あれ?…
さっきの二人?…

ならば、どこに行ったの?…

結構な田舎なので、
周りには何もありません

友達に伝えました
あれ、高知ナンバーじゃね?
友達も首を傾げてましたが、
確かに高知ナンバーです

じゃぁ、あの二人は?…
さっきの水に飛び込んだような音は?…
誰もいないのに、何かを投げ込んだ、
とかでもないよな?
たまたま、
高知ナンバーの方が先に来てた?
そんな偶然も信じられなくて、
段々気持ち悪くなって来ました
そもそも
なんでこんな時間に訪れたのか…
それも疑問に思いました

もうほっといて、帰ろうや、
そう友達の一人が言い出しました
もう一人の友達も同調しました
考えれば考える程、
謎が深まって深みにハマっていきます
諦めて帰る選択をしました

帰りも口数は少なく、
ずっと頭から離れません

あの二人、人だったよな?
友達に問うと、
怖い事ゆうなや、もう忘れようや、
と言うのですが、そう思えば思うほど、
気になって、頭から離れないのです

車は、確かにありました

このままではなんかすっきりしません

何かあってからでは、後味が悪くなる

そう思い立ちました

なので思い直し、110番しました
(厳密には知っていた津山署の番号に)

僕らが気付かない内に
先に行ってしまって、
足でも滑らせて落ちてしまったのか、
どう説明して良いかもわからないので、
ありのままを伝えました

警察には、その場にいてくださいと、
言われ、鍾乳洞に戻ることに…

誰も乗っていない車がぽつり…

津山署は管轄外だったためか、
近くの警察が駆けつけてくれたようでした
あまりにも早く来てくれたので

友達は、なんか良く分からない現状に、
ビビって車から降りようとしません
それもそのはず
僕も訳が分からず、
どう対処して良いかも
わからないのですから
今から思うと、友達には悪い事をしたような気すらします
僕の独断で戻って来たのですから

一応、僕が警察と話しました

入り口付近に先に来ていた
カップル二人と会いました
同年代に見えたので声をかけ、
同い年と知りました
色々聞いてみると高知から美作大学に、
出て来ていると、聞きましたと…
その時は
気にも止めてなかったのですが、
車は後から気付きました
一緒に入って奥に進んでいる時に、
話しかけると後ろにはいなくて、
先に出たのかと思いましたが、
更に奥で、
ドボンという水の音を聞いたので、
急いで奥に行ってみたと、告げました

警察の方ともう一度中に入りましたが、
誰もいません
水面にも何もなく、
捜索はするからという事で、
僕らは帰れることになりました

ホッとしたその時、
ドッボーン!

僕は、背中から落ちました

何が起きたのか分かりませんでしたが、
一つだけはっきりしてるのは、
誰か、もしくは何者かに引っ張られ、
と同時によろけた所を押されたのです

気を失ってしまったのか、
気が付くと、地底湖の側にいて、
鍾乳洞の暗闇の中、一人でした

とぼとぼヨロヨロと、表に出ました

不思議と衣類は濡れていないのです

ただ髪は濡れ、
全身はグッショリしているのです

表には、友達の乗った車があり、
急いで駆け寄り、乗り込みました

警察の姿は、ありませんでした

訳がわからない事だらけで疲れ果て、
「 帰ろう 」
そう一言だけ言いました
友達は顔色が悪く、帰るまで無言でした
家路に着き送って行くと、
二人とも二度とあそこには行きたくない
、そう声を揃えて言いました
確かに普通なら、そうなりますよね…

その後、
警察から連絡はありませんでした

ニュースにも事件にもならなかったので、
その後の事はわかりませんが、
今から思うと、
行方不明になった可能性もあるので、
もっと詳しく調べれば良かったです
当時は時間が経つにつれ、
自然と日常に戻っていました
記憶も段々と薄れていきました

今でこそ思う、憶測に過ぎませんが、
何故、警察は、
車の持ち主や美作大学を
ちゃんと調べなかったのでしょうか?
調べたのかもしれませんが、
行方を探していたのなら、
目撃証言として、
連絡の一つもあったはずだと、思います
最悪の事態を想定しますと、
死体があがっていても
おかしくありません
事件やニュースなどにも
なっていた事でしょう

水の音は、なんだったのでしょうか?
あの二人は、なんだったのでしょうか?
車のナンバーも
見間違いだったのでしょうか?
そもそも、本当に車は、
実在していたのでしょうか?

鍾乳洞で、異世界に行って来ただとか、
出て来たら歳を取っていたなどの、
噂話とかは、良く聞きます
何処かに繋がっているのでしょうか…

今だに、謎な出来事でした…

そもそも、
この出来事を
今更ながら思い出したのは、
YouTubeの良く観ている、
とあるチャンネルで、
未解決事件のアーカイバを見た時、
似たような話しを聞いたからです

その話しも同じ鍾乳洞でした

高知の大学サークルの五人組

怨恨があるような根深い話し

行方不明事故から事件へと…

年代が違うためなのかわかりませんが、
大事件になったようで、
共通点もあり、
未解決というのが、すごく気になります

記憶が鮮明に蘇りました

16年前と21年前、
五歳差ということになります
何か繋がりはないのか…
もしかしたら、身内、兄弟姉妹、親戚、
その身近な方達などの友人関係、
先輩後輩、、、
何かしら繋がりがないのか、
気になります

僕が経験した出来事から五年後という事で…

全く関係ない話しのようには、
思えませんでした…

記憶とは、都合の良いように、
改ざんされるものだと思うので、
アレは、
幻だったとか、悪い夢だったなどと、
思いたいところでは、ありますが、
友達三人と見た、
カップルの二人と高知ナンバーの車

確かに、存在したと、認識しています

いつか、
一つの未解決事件が解決するならば、
自分の体験も解決するのでは、
と思います

パラレルワールドや異世界転生、
過去未来に飛んだなど、
なんでも良いので、
生きていてくれたらと、
思います

そして、
時は過ぎ、
二十八歳の頃、
鍾乳洞に行く機会がありました

当時の彼女(22歳)に、
着いてきて欲しい、
そう言われたからでした
彼女は、大学四年生で、
一人暮らしだったので、
気にもしていなかったのですが、
その時初めて、
家族関係の話しを聞きました
母子家庭で、弟がいて、三人家族
弟のユウキと倉敷まで遊びに行って、
帰りに近道をしようとして、道に迷い、
ここの鍾乳洞の前で、
事故をしてしまった
そういう話しをしてくれました
事故をして、
気がつくと病院のベッドだったそうです
足を怪我して、
しばらくベッドから動けなかったそうです
打ちどころが悪かったのか、
結構な事故だったのではないかと、
聴いた限りでは思います

彼女の記憶が曖昧で、医者の先生に、
記憶障害かもしれないと言われてたそうです

お見舞いに来てくれた友達が、
わかりません
母親がわかりません、
父親がわかりません、
隣のベッドで入院している、
妹がわかりません

鍾乳洞から人が飛び出してきて、
跳ねてしまった、
そう記憶しているそうですが、
物損事故で単独事故だったそうです

妹も記憶障害を起こしているらしく、
自分は、男だと言い張るそうです
ただ一人の理解者は、
彼女だったそうです
周りは妹を「マホ」と、呼ぶそうです
弟の記憶では、
名前が「ユウキ」だそうです
二人の記憶は一致していて、
名前が分かって初めて弟だと認識した、
そう話してくれました
自分の周りがおかしいのだと、
独りではない安心感から、
二人だけの秘密で、それからは、
周りに合わせて生きてきたそうです
医者には、
記憶障害なように片付けられて
しまったようで、
二人ともやるせ無かったのでは、
ないでしょうか

弟は性別すらも違うので、
なだめるのに相当苦労したそうですが、
最終的に女性として生きるのも悪くないと、
自分に言い聞かせたみたいです

足が大分回復して、歩けるようになり、
自分でトイレに行って、
驚愕したそうです
全くの別人だったそうです
まるでアニメや漫画で見たような話しでした
妹は、気付いていて、
どう話して良いかわからなかった、
そうです
会話の内容から、お姉ちゃんだと、
確信はしていたそうです

鍾乳洞に着くと、
「 確かにここで、
男性の方を引いてしまった
記憶にある以上ここに、
手を合わせに来たかった 」
そう言いました
「 信じられないと思うけど、
誰かに聞いてほしかった、
付き合わせてごめんね 」
と、そう言った彼女の話しは、
嘘とは思えませんでした

彼女の地元は津山ではないそうです
詳しくは話してくれませんでしたので、
深くは追求しませんでした
話したくない事もあるのかもしれないと、
理解したつもりでした
確かにこの辺りの土地勘は、
ありませんでしたし、
それに、県南の方に遊びに行っても、
鍾乳洞のある方は、あまり通りません
僕みたいにいつもの道じゃ眠たくなる、
とか気分で色んな道を選択する
のであれば、通る事もあるかとは、
思いますが…
そんなマイナーな県道です
土地勘ないコが近道しようとして通る?
そんな風にも感じます

ウナギが大好きな割りに津山では、
ほぼほぼ食べたのを見ませんでした
カツオはタタキより、
完全に生の刺身が好きでした
僕も鰹のタタキはあまり好まなく、
好みが似ていて、
気にしてませんでしたが、
今から思うと、
なんとなく地元も察しが付きます

彼女と別れた後、
津山で見かける事もありません
バッタリ偶然会う、
なんて事もありません
おそらく、妹と一緒に、
地元に帰ったのではないでしょうか
卒業後も親元に置いていくのは、
心もとないはずですので、
会わないという事は、
そういう事なのだろうと、
納得せざるを得ません

一言、ちゃんと別れを言いたかったなと、思います
突然の別れというものは、何とも言えないものがありますね

その後、
ちゃんと元に戻れていたらと、
そう思います
戻れていたなら、
気付けないのも納得ではありますが…
少し寂しい気も…

鍾乳洞、
なんとも不思議なところだと思います
岡山だけでも、案外沢山あります
行かれる際は、
正式に観光するのが宜しいかと、
存じます

全て同じ鍾乳洞でおこった、
不思議な体験でした…

 

得点

評価者

怖さ鋭さ新しさユーモアさ意外さ合計
毛利嵩志151515121269
大赤見ノヴ151516151576
吉田猛々171516151780
合計4745474244225