「絶望(悪夢)」

投稿者:落合ちゃん

 

この話は10年以上前の出来事に端を発する。

私は、ある殺人犯(当時容疑者)の弁護を担当していた。

事件の概要は避けるが、わかっているだけで5人の命を奪い

さらに遺体に対しても(後に分かったのだが生きている時にも)

想像しうる非道と凌辱行為の全てを行っていた。

まさに吐き気を催す邪悪とはコイツのことだと世間は騒いでいた。

当時の私は「死刑廃止」論者の急先鋒だったということもあり、

同じ会派の弁護士伝手に、彼の弁護を担当して欲しいと頼まれ、

弁護チームの主任として関わることになった。

そして、彼と接見しているうちにわかったことがあった。

彼の言動は自己中心的であり、

その考え方も非常に利己的で幼さを感じさせているが

実際の知能指数はもっと高く感じた。

起こした事件の手口や手段から、ある程度、予想はしていたが、

彼は、警察や検察に対して「幼い粗野な自分」を見せることで、

すでに「裁判」で何を争うべきかを

わかっていて行動しているようだった。

そして私自身も事件的に検察は

死刑を求刑するのはわかっているので

彼のその行動に乗っかり、精神鑑定を依頼し

責任能力を争点にし、無罪ないし減刑を狙い

「どんな手を使ってでも死刑を回避する」ことを

目的にしてしまっていた。

さらに私は、彼の知能の高さを利用し

あることを持ち掛けてしまった。

接見だけでは、時間も限られ、

周りにも人の目があるため、

手紙のやり取りをするようにしていたのだが、

そこに符丁、つまりメッセージを隠して

今後の方針を指示するようにしていた。

普通の弁護対象では難しいが、

彼の理解力の高さや

無罪になるための執念は利用できると踏んで

接見の時に、誰にもわからないようにヒントを与えると、

やはり彼はすぐに理解して、

手紙に隠されたメッセージでの回答や、

こちらからの要望を接見で、

お互いにだけわかる言葉で伝えるようになった。

そして精神鑑定でのコツ、拘置所での過ごし方、

様々な今後の作戦を伝えていた。

そういったやり取りの中で

彼も私に心を許したのか、

ある日手紙のメッセージに奇妙なことが書かれていた。

「ビデオを回収してほしい」

私は気になり、接見で確認することにした。

確認した結果はこうだ。

警察や検察が押収してない証拠品として、

犯罪行為を収めたビデオが存在する。

逮捕された時の家宅捜索で押収されれば、

決定的な証拠になってしまうという理由で、

事前に駅のコインロッカーにしまい、

カギを自宅の庭に埋めているということだった。

犯罪行為を犯して、ビデオを回しながらも、

冷静に今後のことを考え対処していることに、

彼の知能の高さと冷静さに、恐怖を覚え、

今自分が行っているこの弁護は本当に正しいことなのか悩みつつ

私も、もしそのビデオが公になると、

これまでの努力がすべて無駄になると感じ、

ビデオを回収することにした。

それが間違いだった。

コインロッカーで回収したビデオは全部で6本だった。

事件化している5人より数が多かった。

私は、内容の予想がついていたが、

その本数が気になり、

事務所のビデオデッキで見てしまった。

3本目まで見たとき、想像通りの内容だった。

彼の証言通り…。

遺体を解体して、弄び、自慰行為を行い、食事をし、

一通り飽きると、黒いごみ袋に纏める。

普通の人では耐えきれないかもしれないが、

捜査資料も見ていたので、まぁ、そんなもんか、

これならむしろ、見つかっても精神鑑定でいけるな、

と思ってしまっていた。

しかし4本目のビデオは違っていた。

そこに収められていたのは、

現在、起訴されている事件では見た覚えのない

中学生と思しき少女が映っていた。

そして、その少女の涙顔の正面からビデオが始まった

「生きている」

彼の証言や、警察の司法解剖の結果では

「全て殺害してから弄んだ」ということだった。

そこからの60分は地獄の時間だった。

60分間彼女は生かされ続けていた。

その彼女に対して、冷静に、淡々と、

時折り笑い声は聞こえるが、一切カメラを向けずに、

この世の人間が考えたとは思えない、凌辱を続ける彼。

私は、それをなぜか途中で停止できずに見てしまっていた。

そしてビデオで60分を過ぎたころ、

最後の呼吸をした彼女の顔のアップで止まった。

私は、そこで気づいた。

こいつは、生かしておいてはいけない人間だと。

自分もこの行為に加担している1人だと思ってしまっていた。

しかし、チームで動いている以上、

チームが無罪を勝ち取ろうとしている中、

これまでリーダーとして動いていた自分がこのビデオをもって、

彼は生かしていおいてはいけない人間です、と言ってしまえば、

今後、弁護士として活動ができなくなる

ということも考えてしまった。

そこで私は、信頼できる、マスコミの友人に電話した。

マスコミ側からリークしてほしいと。

友人は、そのビデオを見て漏らした。

「いつもはお前が主張する無罪を

 糾弾する側となってやりあっていて、

 今回の裁判もそうなると思っていたが…

 今のお前の判断は間違いなく正しい。

 こいつは生かしておいてはいけない人間だ。

 そして、お前の立場があるから、

 俺に託したという気持ちもわかる。

 だから、あとは任せてほしい」

そして、友人はうまく立ち回り警察を動かし、

6件目の事件と、壮絶なビデオの存在を

うまく世間に報道してくれた。

数日後、6件目の事件の件を伝えに、接見にいったところ、

彼は私を睨んでいた

「裏切ったな、お前は解任してやる」

その一言で私の仕事は終わった。

そして友人を通じて、私の談話として

「私はこれからも死刑廃止、できるだけ容疑者には

 罪と対話してもらう、その弁護の姿勢は変わりません。」

と発表してもらった。

数年後、彼は別の弁護チームで戦っていたが、上告棄却によって極刑が決まった。

それから数年後の現在、彼の刑が執行された。

やはり、彼の事件はニュースでも大きく取り上げられ、

私が彼の弁護を解任されたことも掘り返されていた。

私自身は、あまり気にしなかったが、

それを見て、中二になる娘が心配そうに聞いてきた、

「パパ、この事件大変だったの?」

そんな娘の優しさに胸が熱くなってしまったが、

ふと、こんな娘と同じ年頃の少女にした

彼の所業を収めたビデオを思い出し、

何とも言えない気分になってしまった。

そんな時、携帯の電話が鳴った。

あの時の弁護チームだった弁護士の一人からだった。

私は着信に出ると、その弁護士から恐るべき一言を聞いた。

「〇〇さんが、自殺した」

私が彼の弁護を担当した時のチームのもう一人が自殺したというのだ。

私は、あの弁護チームが解散したあと、会派のメンバーとも少し疎遠になっていた。

主義や主張は変わったつもりはないし、そう行動してきたが、

どうしても彼らを裏切ったという負い目を感じていたからだ。

とはいえ、完全に関係を切ったというわけではなく、

年に2、3回程度、祝い事や忘年会といったタイミングでの接点は持っていた。

そんな折の訃報。

しかも、自殺。

「遺書は見つかっているのか?」

思わず聞き返してしまう。

「いや、遺書は見つかっていない。

 ただ警察も状況から言って自殺しかありえないということだ。

 何せ、誰もいない事務所で首を吊っていたらしいからな。

 キミのところもそうだと思うけど、

 事務所内に依頼主とのトラブルを避けるために

 防犯カメラを設置しているだろう?

 それを全てチェックしたところ、

 自らの意思で吊っているのがはっきりと映っていたとのことだ」

「いったい、なんで…」

「わからん…とりあえず、

 通夜や告別式の日取りが決まったらまた連絡する」

そして数日後、改めて日程が決まった旨の連絡があり、

通夜には仕事で参加できなかったが、

告別式に向かった。

告別式に向かうと、彼の事件で捜査を担当していた刑事さんがいた。

お久しぶりですと声をかけると、私の顔を見て、

「あー、弁護士さんの、あの…」

私は「落合です」と答える

「なぜ、刑事さんがこの葬式に?」と聞いてみる

弁護士と刑事、意外と接点があるようでないものである。

「今回の件、自殺された事務所が私の管内でしてね。

 私の部下が担当しているんです。

 それに、亡くなられた〇〇さんとは、

 あなたと一緒に担当された、あの事件もですが、

 同じ管内ということで、結構、私が担当した事件を

 〇〇さんが担当することが多くてですね。

 それで、実はプライベートでも付き合うようになってたんですよ」

「そうだったんですね。

 では、自殺と判断したのもアナタなんですか?」

「疑ってるんですか?」

「いえいえ、私も最近は〇〇さんと、

 疎遠だったので実際のところはわからないんですが、

 〇〇さんの事務所は順調だったと聞いていたものですから」

「そうですよね、遺書もないですし、私も普段のお付き合いから、

 一報を聞いたとき、そんなまさか?と思いましたが、

 防犯カメラという動かぬ証拠がありますからね。

 ただ、一応聞きこみ調査などを行い、

 何らかのトラブルを抱えていなかったかは確認しているんですが…」

「何にもなかったと…」

そんな会話をしながら式が始まった。

そして焼香の時間となり、

遺影の前に立ち焼香をしようとしたところ

一瞬、遺影が曇り、別の人の顔が見えた気がした。

「あの顔は…?」

そんな疑念を抱えながら席に戻り、式は順調に終わり、

火葬場へと運ばれていった。

私は、次の仕事があるので、ここで離れようとしたのだが、

刑事さんが最後に話しかけてきた。

「落合さん、〇〇さんの件で、

 1つ気になることがあったので、お伝えしておきますね。

 これは落合さんも関係があることなので。」

「え?関係があるとは?」

急な話で思わず声を上げてしまう。

「いや、〇〇さん、あの例の事件の犯人の

 死刑執行があった日の防犯カメラで

 なんでお前がここに!と

 防犯カメラでは相手がよく見えない位置のドア越しで

 叫んでいる様子が映っていたんです。

 そのまま、〇〇さんが叫んだ相手は帰ったらしく、

 そのあと、ひどく落ち着かない様子で事務所内を

 ウロウロする〇〇さんが映ってました」

「なんで、そんなことを、今自分に?」

「いや、私も映像を見たときに引っ掛かってたんですが、

 今日、あなたにお会いして、思い出したんです。

 その日って、あの執行日だったと。

 私たち刑事にとっても忘れられない犯人でしたからね。

 あなたを見て、防犯カメラの日付を思い出して急に閃いたんです。

 これから、署に戻って改めて確認してみます、それでは。」

そう言って刑事さんは式を後にした。

私は刑事さんの後ろ姿を見送ると、

「っつ」

刑事さんの後ろに見覚えのある背格好の男が見えた。

「そ、そんなバカな…」

私は、気のせいだろうと、視線を外した。

そして、もう一度刑事さんの後ろ姿を見ると

「来てたんですね」

と真正面に、彼が立っていた。

私は、うわぁと大きな声を上げて後ろに倒れると

周りの人がどうしたんですかとこちらを気にしてやってくる。

すると、彼は消えていた。

見間違えるわけがない

接見で何度も言葉を交わした相手

死刑になったはずの彼だった。

しかし、その時の私は、当時の弁護チームの仲間の葬式で、

精神的に疲弊したところに

刑事さんから変な話を聞かされていたので、

心理的にパニックに近い状態で、

幻覚を見せたのでは?と無理やり納得させた。

それからまた数日がたった。

今日は事務所員は別として、自分の仕事は立て込んでなく

事務所の資料の整理をしていた。

机の上の資料を本棚に戻していくと

1通の封筒がヒラヒラと落ちた。

取り上げてみると、私宛のものなのだが、

差出人が記載されていなかった。

事務のキチダさんに、この封筒どうしたの?と聞いてみると、

数日前に届いたって伝えてませんでしたっけ?とのことだった。

数日前といえば、葬式に参加しており、

事務所に顔出してはいなかったはずだが、まあよい。

さて、と封筒を軽く振ってみる。

職業柄、差出人不明の封筒の場合、

私に対しての抗議や誹謗中傷の手紙の場合も多いのだが

まれに嫌がらせのような、

昔でいうカミソリ入りではないが

危険物が入っていることもあるので、

音や感触で確かめる。

まぁ、キチダさんもその辺りは心得ているから

おそらく大丈夫だろうと思い、私の机に置いたのだろうが…。

そして、一応、大丈夫そうなのが確認できたので封筒を開ける。

すると、中にはノートを切って折りたたんだ手紙が入っており、

その手紙を開くと、見覚えのある文字が躍っていた。

こ、この文字は…

彼の文字だった。

そして、手紙の内容は

【最後のやり取りになったらすいません

 私は、今、寒いところにいます

 裏切られて、すぐ、

 私は、涙の日々を過ごしていたのに

 やはり悔しい

 この恨みというべき

 感情のまま

 死んでいくのです】

これは、彼と私がやり取りに使っていた符丁

メッセージの冒頭に、どこの文字を見るのかが記載されている

今回は最後と書かれているから、文の最後を読んでほしいということだ。

すごく初歩的な符丁だから、誰かの悪戯も考えられる。

だが、彼と私がこの符丁を使っていたなんて知っている人はほとんどいない。

いや、今はもういないと言った方が正しい。

このやり取りは、先日、亡くなった〇〇さんと

私と彼だけが使用していた通信手段だったのだから。

しかも、彼の字なんて、そう簡単にマネできるものでもない。

一体、どこの誰が。

と思いながら、符丁のメッセージを読み解く

【すぐにいきます】

自分の背中に戦慄が走る。

こ、これはいったい。

すると、耳元で

「もう少し待ってくださいね」

と彼の声が聞こえた気がした。

そして、言い知れぬ不安と恐怖を感じながら、また数日が過ぎた

誰かに相談できるわけもなく、

家族にも心配かけぬよう平静を装っているが、

いつどこで、彼の存在をほのめかす

影がやってくるのかわからないのだ。

私は、いつも以上に周りに目を配りながら、事務所へ向かう。

すると、事務所につくと、机の上にVHSのビデオが置かれている。

思わず、事務のキチダさんを呼ぶ。

「このビデオ、どうしたの?」

「いやだ、落合さん。

 昨日、退勤した後、すぐに事務所に電話してきて、

 資料室の棚の上に3番って書かれたVHSがあるから、

 申し訳ないけど、机の上に置いておいて

 って電話くれたじゃないですか。

 忘れたんですか?」

「いや、私はそんな電話した覚えないが…」

「もう、最近、仕事のペース落としてたから

 まだ頭が休んだままなんじゃないですか?

 来週から案件バリバリ入ってるんだから頼みますよ」

そうしてキチダさんは自分の机に戻る

私は、もしかしてと、

携帯電話の発信履歴を確かめる。

確かに発信している。

…どういうことだ…

私の頭には、彼の顔がよぎる…

いや、そんなバカなことはない

そう今考えたことを振りはらって

VHSを確かめる。

「キチダさん、ちょっと資料室のデッキで、

 このビデオを見るから

 お客さんが来たら、

 他の人に対応してもらっておいてくれないかな。

 ちょっと集中して確認したいんだ。

 桜井君も、高見沢君も、坂崎君もお願いね」

 と他のメンバーにお願いし、資料室に行く。

仕事柄、VHSで録画されたビデオを見ることもあるので、

資料室にはVHSや、カセットデッキ、MDプレイヤー、といった、

かつての録画、録音機器がそろっている。

そして、おそるおそるVHSを起動する

すると、

ザーーーっと

砂嵐の画像で、何も録画されていなかった。

私は、ほっとした。

良かった。

想像したものと違う…。

すると、砂嵐のザーーーーっという音の中から

聞き覚えのある声と

下卑た笑い声が聞こえてくる

「楽しいんですよ

 死ぬ間際の人の苦痛に歪みきった顔を見るのが…

 生きた人間を加工するのも楽しいけど

 生きているとうまくいかないことがあるから、

 死んだ直後の顔のままで、自分好みに加工する

 それが楽しい」

彼の声が私に語り掛けてくる

私は慌てて停止ボタンを押した。

その日の私は仕事にならなかった。

来週の裁判に向けての資料の整理と準備をしたかったのだが、

何も手がつかなかった。

気が付くと日も暮れ18時を回っていた。

他の弁護士も既に帰宅し、最後に事務のキチダさんが、

それでは私も帰りますねと、事務所を出て行った。

私も帰宅しようと思ったのだが

最後にメールのチェックだけしようとメールソフトを起動する

すると数件の新着メールの中に1件

知らないアドレスから、無題のメールが届いていた。

いや、このアドレスは見覚えがある。

彼が昔、使っていたハンドルネームを元にしたアドレスだ。

なぜ、このようなことが起きているのかわからない。

彼は刑が執行されて、もうこの世にいないはずなのだ。

だから、彼と私の関係を知っている人の悪戯かと思い始めた。

そして、私はメールを開く前に、私と彼の関係を知っていそうな人物

あの時、協力してもらったマスコミの友人に電話してみた。

お前の悪戯じゃないか?と確認し

悪かった、と言われるのを期待していた。

電話は繋がった。

「もしもし、私だ。」

「あ、落合弁護士って、やはり落合さんだったのですね。」

誰だ?聞き覚えのある声だが、友人ではない。

私は、通話を間違えたか、電話番号が変わっていたのかを疑った。

「ああ、すいません。

 私は刑事の××ですよ、この間の〇〇さんの時、どうも…」

「え、刑事さん?いったいなぜ?」

「今日ですね。

 この電話の持ち主の▲▲さんが、死体となって発見されましてね。

 何か証拠がないか携帯電話を探っていたところ、

 落合弁護士と書かれた着信がありましたから、

 あの落合さんかなと思いまして、出てみたんですよ」

「はあ、そうなんですか…

 え?死体、で刑事さんってことは、

 あいつは何かの事件に巻き込まれたんですか?」

「ええ、そうなんです。

 まだ事件発表してないんですがね。

 それで、これが落合さんからの着信であれば

 出ておこうと思った理由もありましてね。

 実は、▲▲さん、が発見されたとき、

 あの事件の時のように黒いごみ袋に纏められていたんですよ」

「もしかして、あいつと同じ手口…」

「そうなんです。

 だから、もしかすると、彼の刑が執行されたことで

 彼を神格化し崇拝するものが彼の刑に関わったものに対して

 復讐したのでは?と疑ってはいるんですが…。

 私が現場を見た印象ですと、完ぺきに彼の手口なんですよ。

 マスコミ発表もされてない、

 裁判でも協定を結んで伏せていた、あの手口なんです。

 ましてや、▲▲さんがあの時の事件の報道に関わったなんて、

 知る由もない事実。

 とはいえ、先日の〇〇さんの奇妙な行動も含めて、

 何か起きているかもしれないので

 落合さんもお気を付けください」

「はい」

そう言って電話を切った。

なんだ、いったい何が起きていると言うんだ。

今日?

ごみ袋?

もしかして今朝のVHSには、彼が▲▲を加工していた様子が

映るはずだったとでもいうのか?

妙なことを考えてしまう。

そんなバカなことがあるわけがない。

そう思いながら先ほどのメールを改めて開く。

URLが記載されているだけで、他に何もない

私は、躊躇なくURLをクリックする。

すると、ブラウザが開き、ブラウザ内で動画が立ち上がる

「そ、そんな…」

その動画は

「娘」が涙を流しているアップ姿から始まった。

そして、耳障りな彼の笑い声が動画から響く。

私は、これから動画で再生されるであろう内容を想像して絶望した。

 

得点

評価者

怖さ鋭さ新しさユーモアさ意外さ合計
毛利嵩志151515101570
大赤見ノヴ171615161680
吉田猛々181718171888
合計5048484349238