「コケタ」

投稿者:ツーーナ

 

曽祖父が体験した話
ずっっと前に聞いて忘れていたんですが、ある出来事がきっかけであの頃聞いた話を鮮明に思い出すことができたのでお話ししたいと思います。

自分の曽祖父は自分が生まれた時は農家をしておりそれよりずっと前は戦争時代を生き抜いてきた人で、ほんとにきつい時代だったと話してくれた覚えがあります。

そんな戦争も潜り抜けてきた曽祖父が身の毛も世立つほど恐ろしいと話してくれた話がありました。それを話していこうと思います。

曽祖父、戦争が終わってだいぶ時代が落ち着いてきた頃からバイクを走らせるのが趣味の一つになっていたらしく、あまり他の人にバレない時間帯を選んでは、バイク仲間の友人何人かとよく山道を走らせていたそうです。
その日もいつもと同じように山の頂上付近まで友人とバイクで登り夜景を見てある程度堪能したあとは、麓までどっちが先に降りられるかを競っていたらいしです。

ただいつもと違うことがいくつかあり、まず一つ目として、この日走った山はいつも走っていた山とは別の山を走ったらしくその理由としてこの日一緒に走った友人Aが近所の山は走り慣れてて嫌だと言うことで急遽別の山にしたそうです。

その後もB山(いつもの山とわからなくなりそうなのでここではB山とさせてください)に向かうまでのんびりしゃべりながらドライブするような感じで向かっていたらしいです。その間はただただ楽しい時間が流れているだけでまさかあんな恐怖体験に変わってしまうなんて思っても見なかったとあとから聞かされました。

その日も曽祖父は動物が飛び出してきても止まれるくらいの速度で楽しみながら安全に下っていたそうです。ただAは学業や、親の手伝いなんかで中々山に登れず、少し鬱憤が溜まってたようで久しぶりの山にかなり興奮していて、いつもなら曽祖父と付かず離れずのスピードで、逆に周りにセーブをかけるように言い聞かせるような立場だったのが、その日は曽祖父の倍以上のスピードは出てるくらい速く、気づいた頃には2、3カーブ先におり曽祖父の目には点にしか見えないくらいに離れてたみたいです。
曽祖父は、あまりにも速く降っていくAをみて自分も追いつかなきゃと思ってバイクを少し飛ばし気味で運転することにしたそうです。
ただ、2カーブ目に差し掛かるあたりで違和感を覚えたそうです。理由は右手の雑木林になっているような場所にひっそり佇む人影が見えたからだそうです。その人影を目を凝らしてみると長髪の女の人だったようです。
時間は22時は回っていてはじめは声をかけようかとも思ったらしいんですが、やばい人だと嫌だなだと言う思いとAも前通っているなら、あいつ先声かけて、断ってまだここにいるんじゃないか?と言う謎の自信があったみたいで、気にすることなく横を通り過ぎようと思い進みました。
女の人の容姿は話しかけるのを戸惑うような見た目をしており、さっきもいったように髪は黒髪長髪で、赤のワンピースに赤いハイヒールを履いた貞子のようなスタイルをしていたと言います。
曽祖父、横に並びそうになるギリギリまで声かけてあげようかかなり悩んでいたそうです。
ただ曽祖父はAのことも心配に思い、追いつくことを優先に考えて女性には申し訳ないけど通り過ぎることを選んだようで、急に飛び出してきても止まれるくらいのスピードまで落として横を通り過ぎる決断をしたんです。
ゆっくり進み女の横に並んだその時、急に糸が切れたかのようにガクッとお辞儀態勢になり止まったんです。えっ?なに??と思いながら女に釘付けになっていると、お辞儀のような体制で勢いよく顔だけをカッと持ち上げました。顔にかかっていた長い髪が顔を見せるためと言わんばかりにハチワレに別れ顔が顕になりました。その顔の目は思いっきり見開き少し充血して、黒目はそれぞれ斜め上を向いて、その状態でいきなり口をパカっと開けたかと思うと女の口から
ぎぃゃぁぁぁあ!!と言うAの声と
ガリガリガリガリ!!と言うバイクが擦れる音が聞こえてきたんです。
その声に恐怖と何が起こったのか整理できてないせいで動けず放心状態になりました。
そうしていると女が口を開けて音を鳴らしたまんま目元だけ満面の笑みで笑い始めたんです。
もちろん左右のはっきりしていない黒目のまんまで…
そこからは放心状態だった体に鞭打ってAの安否のために、動物なんて気にしないくらいのスピードでバイクを飛ばしまくって走らせだそうです。
ようやく見えてきた景色を見て開いた口が閉まらないんです。
Aのバイクはガードレールに接触してボロボロになり、ガソリンが漏れたせいで燃えてるんです。それもかなりの火柱をあげて。
曽祖父は必死になってAの姿を探しまわったそうで、ひたすら生きていることだけを祈ったそうです。結局必死に探したA、バイクの下敷きになって炎に飲まれてたんです。ダメだとわかっていても諦められなかった曽祖父は急いで水筒の水をぶっかけたり、土や自分の上着なんかを使ってなんとかAにまとわりついている火を落ち着かせて火だるまになってるAを火傷を負いながらも引きずり出したんです。でも見るからに手遅れだったんです。
だってその体、頭がないんですよ。勢いよく切れたのか断面はすごい綺麗に切れていたそうです。曽祖父は手遅れと分かっていながらも急いで周りを確認して、頭を探したんです。ガードレールに手をついて崖下も目を凝らしてよーく探していたそんな時でした。崖下を確認し終わって横を見た時、目に飛び込んできたのはガードレールに赤ーいラインが入ってる異様な状況。それが矢印と言わんばかりにその先に無造作に落ちてる頭だったそうです。ヘルメットは衝撃で取れてて、断面まで鮮明に見えたそうです。

曽祖父もう泣きそうで声も出ません。そこに転がってる頭を見つめるしかないんです。そしたら、そのAの生首の目が急にぎょろぎょろ動き回って、全く定まりもしてない目があっちこっちいろんな箇所見てるんです。
唖然としてると、急に口が開いたと思ったらさっきの女であろう声が、Aの口から永遠と聞こえてくるんです。Aの口をスピーカーのように使って…
その後はかなり気が動転して曖昧みたいです。
曽祖父本人が呼んだのか。
通りかかった他の人が呼んだのか。
救急車が到着して、警察も来て、気がついた頃には事情聴取も済んで、曽祖父の無事を見た両親は泣いてるんです。
Aの親もはじめは悲しいような険しいような顔をしていたそうですが、親切な人だったようで最後には逆に心配してくれたみたいです。

曽祖父はそれからすぐに大好きだったバイクも捨てて、楽しみにしてた山の頂上から夜景を見ながら降っていくドライブも一切やらなくなり山そのものに一切寄りつくことをやめたらしいです。
数十年経ってから時々他の友人たちにキャンプなんかも誘われたりしたそうなんですが、それすらも一切行かなかったみたいです。

曽祖父、あの日から女は見ていないそうですが、次山に近寄ったら今度こそ自分も引き摺り込まれてしまうだろうと話していました。
それにラジオを聞いている時不意に耳を澄ますとあの日死んだAの声が聞こえてきそうで、ろくに電子類も使わないようになったとのことでした。

そんな曽祖父も亡くなって数十年経ち、話を聞いた自分も中、高、大、と進み、イヤイヤながら自動車学校にも行き、今ではすっかり運転に慣れてきて、自分の住んでいる県を端から端まで遊び歩く為にひたすら車を乗り回すようになっていました。
そんな時です。この話を思い出したきっかけが起こったのは、その日は自分の検定がようやく終わった記念に友人たちとご飯に行きそのあとカラオケに行きその帰り道でした。かなり楽しんで歌い過ぎて喉が枯れて全然声が出ない状態にも関わらず車を走らせながらスマホと繋いだスピーカーから自分の好きなアーティストの曲をノリノリで聴いて歌っていました。そして、いつもよく使う山道を走っている時だったんです。その時は0時を過ぎており、いつもは遅くても夕方の車がよく走っているような時間帯にしかその道を使わなかった為、まっっくらな鬱蒼とした闇がその時はたまらなく不気味に感じて、早く帰りたいが為に速度をあげて少し飛ばし気味で山道を下っていました。
そんな気持ちに余裕がない時でした。
横の林から猫が急に飛び出してきたんです。かなり寸前で飛びたじてきたこともあって考える暇がありませんでした。
脳内には「轢き殺せ!」と教習所で教官が言っていた言葉が頭を譲っていました。急に動物が出てきた時はそうしろと教習所で教わった以上そうした方が安全ではあったんだと思うんです。
ただ自分はそこで轢くっと言う判断を選ぶことができなかったんです。猫が好きっということもあってそんな可哀想なことはできないだと思って思いっきりハンドルを切って避けると言う判断をしました。
無事、大事故。
車は横転しガードレールや石段にぶつかり一回転したかと思った瞬間車体が斜めに硬がり運転席を下にした状態でバタン。
数十メートル擦れるように進み続け車の中の荷物。ありとあらゆるものを放り出して停止。その間はずっと自分のすぐ横で窓ガラスが割れ、飛び散り、ミラーはへし折れ真横で火花が飛び散っていつも燃え出してもおかしくないような状態でした。

ガラスで切り傷、擦り傷、打ち身で身体中痛くパニックになりながらも早く車から出なきゃ。と言う考えが浮かび、半ば強引に痛む体を庇うように車から這い出て行きました。
かなり大きな物音だったこともあって、もう猫はいないだろう、引いてないならよかったと思いながら辺りを見渡すと自分の車のすぐ横にその猫が座っていたんです。真っ暗な中に真っ黒な猫が目を爛々と輝かせそこに静かに座っているんです。
かなりでかい音を出して横転し、数十メートルに渡って桁魂音を立てながら進んだというのに威嚇すらすることなく、野良猫のはずなのに逃げるそぶりすら見せないそんな猫を不思議に思いつつかなり不気味に感じ始めていたその時です。

前に曽祖父に聞いたことがフラッシュバックして頭にドンっと強い衝撃を受けました。
曽祖父、女の声は聞いても内容覚えてなかったんです。あまりの恐怖で記憶が蓋をしたんでしょう。でも今まさに曽祖父が体験したであろう現場に自分が立ち会っているような状態になり、曽祖父が女の声に蓋をした理由がはっっきりとわかりました。まさか自分までもが曽祖父と同じ体験をすることになると思っていませんでした。庇った猫の口がゆっくり開きその猫の口をスピーカーのように使い女の声で、
コケタコケタコケタコケタコケタコケタコケタコケタコケタコケタコケタコケタコケタコケタコケタコケタコケタコケタコケタコケタコケタ
アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ

と、コケタというセリフと見えてなくてもわかるくらい悪意のこもった笑顔で腹を抱えて笑う
そんな光景が脳裏に浮かびました。
こんなものを見てしまったらだれでも忘れようと頑張ると思います。だって例えるなら恐怖の中にそのまま包まれているようなそんな雰囲気ですもん。
そのあとは反響らになりながら、親と警察に連絡。父親が現地に着いた時には朝4時ごろになっており、自分は親の車で震えてました。
気づいた時にはあの猫も、コケタと言う声も全部聞こえなくなっていました。緊張の糸が切れたからなのか、その後は急に眠りについて次に目覚めた時には病院の待合室に座らされていて、切り傷のところにはガーゼタイプの絆創膏がはられ、打ち身だらけの体には大量の湿布が貼られ、スースーする感覚と時々くる鋭い痛みに耐えながら病院を後にしました。それから数日経ち何事も起こらず、ふと、曽祖父がしてくれた話と今回自分が体験した話が一緒なことが起こったと思い、そこから過去の記憶が芋蔓式に思い出すことになり、曽祖父の話を自分の話と合わせて一緒に語ることにしました。
そこからさらに時が経ち今では塞ぎ込んでた心も楽になり、車も前と変わらず安全に配慮して平凡な日常を送れています。

ただし、この事故の一件依頼車での事故が立て続けに起きるようになったり、ちょっとした心霊体験のようなものをすることが続き恐怖に震える日々が続き、かなり大変な目に振り回されることが多くなり気が滅入ることが多々ありました。また、時々掠れるようなか細い笑い声のようなものが聞こえたりしますが…
まぁ、それはまた機会があればお話しします
ご試聴ありがとうございました。

 

得点

評価者

怖さ鋭さ新しさユーモアさ意外さ合計
毛利嵩志151512121569
大赤見ノヴ171515161679
吉田猛々181617161683
合計5046444447231