「ドス黒い何か。」

投稿者:サクちゃん

 

これは僕が20代前半の頃の話です。
その当時はよく、幼馴染のAと心霊スポットや変な噂がある所を夜な夜な巡ることにハマっていて、お互い仕事終わってから待ち合わせをし、たわいもない話をしながらいつものように心霊スポット巡りをしていました。
僕は、物心つく前から7歳まで霊感があったらしく、人ではないものとよく遊んでいました。おじさんだったりお姉さんだったり同じくらいの子供だったり様々でしたが、その当時は、幽霊だとはわからず遊んでいて、歳を重ねるにつれてあれは人ではなかったんだと気づきました。
7歳以降は見えなって言ったのですが心霊スポットに行くようになりまた見えるようになってきました。
幼馴染のAは霊自体は見えないが、感じることができるらしくよく、寒い。具合悪い。などと言いながらも心霊スポット巡りはかかさず参加してました。
そんなある日、いつものように待ち合わせをし、今日はどこ行く?などと話しながら向かおうとしていた時に、Aが唐突に、相談がある。と。
僕:どうした?パチンコで負けすぎたから金貸せとかなら無理だぞ!俺もだからな!笑笑
A:違う。お前、視えるよな?急で申し訳ないけど、今日は俺のオヤジの事を視て欲しいんだ。
僕:え?なんかあったんか?オヤジさん出張でいつもいないやんけ?
A:そうなんだけど、数年ぶりに帰ってきたんよ。そしたら、いつものオヤジじゃなくて。やつれてるし、独り言ずっと言ってるし、普段酒なんかそんなに呑まねーのに昼間からずーっと呑んでて、しかもずっと寝てないんだよ。外にも出ないし。
僕:視るのはいいけど、お祓いとか助ける事は俺にはできねーぞ?それでもいいなら。
A:大丈夫。家族には今日、お前がくること伝えてあるから頼むわ。
僕:わかった。とりあえず家行こか。
Aの家に着き、時間も21時頃なので
僕:夜分遅くにお邪魔してしまい申し訳ありません。
A母:お久しぶりね。いつもAがお世話になってごめんねー
僕:大丈夫です!基本俺が誘ってるんで!
ちなみに、オヤジさんは?
A母に案内され、親父さんのいる部屋に着き、部屋の扉を開けたら6畳ほどの部屋の真ん中に正座したオヤジさんがいた。
Aと一緒に部屋に入りぐるっと見渡した部屋は、窓が段ボールで閉ざされ、テーブル以外何も置いてない部屋に異様な空気を感じながら、僕はオヤジさんに話しかけた。
僕:オヤジさんお久しぶりです。覚えてますか?
A父:おお。覚えてるよ。元気にしてたか?
などと普通の会話はできた。ただ、その声には生気がなく、目も虚。無精髭に目の下はほんとに寝てないんだなとわかるくらい真っ黒。小さい頃よく遊んでいた親父さんではなかった。
僕が視る方法が目を閉じて視たい対象をイメージすると、見えていた。
いざやってみると、人にこんなに憑くのかと思うレベルで色んな物が憑いていた。
動物、人。全部で10体ほどだったと思う。これは寝れないわと思い、見たままをAの家族に伝えた。
ただ、何かおかしい。今見えてるものだけではこうはならない。となんとなくだが、直感でそう思った。
今見えてるものは、悪い念をあまり感じない。憑かれてる側は大変だろうがそこまで悪さをする霊ではないなと。
僕:なんでだ。他にもいる。けど見えない。隠れているのか?
と、思った矢先、オヤジさんの周りにいた霊が消えた。
僕:…ん?
その瞬間、違和感の原因がわかった。
オヤジさんの身体からドス黒い何かがゆっくりと姿を現した。
僕:あ、ダメなやつだ、やばい。ここにいちゃやばい。
と、直感で感じ、A家族を全員外に出した。が、その時
僕の隣にいたAが
A:あ、オヤジのこと助けないと。オヤジが俺を呼んでる。
A父はAの事を呼んでいない。が、Aは
A:親父が俺を呼んでる!ほら!助けてって言ってる!ほら!!
僕はもちろん、A家族にもその声は聞こえていない。
僕はとっさにAをビンタした。そうしなきゃいけないと思ったから。
僕:誰も呼んでねーよ!落ち着け!素人の俺でもわかる。オヤジさんに憑いてる奴はだいぶヤバい。すぐお祓いした方いい。連れていかれるぞ。
と、素人ながらそう思うほどヤバいものが見えてしまった。
例えられないくらい、ドス黒く禍々しい何かがオヤジさんの体から出てきていた。
僕:申し訳ないけど、ここまでしかしてやれない。すぐお祓い連れてった方いい。

と伝え、その日は帰宅した。その出来事から3日後、オヤジさんは失踪した。
携帯も財布も持たず、靴すらも家の中に残ったまま失踪してしまった。
警察に捜索願いを出し、僕もAも思い当たるところをしらみ潰しに捜索したが見つからなかった。
失踪してから2ヶ月後、県外の山の中で遺体の状態でオヤジさんは見つかった。

ポケットには殴り書きで書かれた、遺書のようなものが見つかり、その内容が
友達の借金の連帯保証人になってしまい数千万の借金を肩代わりさせられてしまったと言う内容だった。
裏切られた辛さやいろんな葛藤に耐えきれなくなり県外の山の中で自殺してしまったんだと思う。
その恨みつらみ葛藤の念が生み出したのがあの、僕が見たドス黒い何かだったんだのだろうと今となっては思う。

話はここで終わらない。
葬儀火葬を終え、Aは傷心しきっていた。毎日、辛い死にたいと泣きながら言っていた。僕は仕事の合間をぬいながら毎日こまめに連絡をし、仕事が終わったらAに会いに行き、励まし続けた。
その生活が1ヶ月ほど続いたある日。
Aは吹っ切れたのか、いつものようにパチンコいこーぜーと連絡をくれた。
安心した。辛かっただろう。悲しかったろう。でも、自力でそれを乗り越えたAを褒めてあげたかった。
僕:よっしゃ、仕事定時で終わらすからパチンコ行こうぜ!迎え行くわ!
A:家で待ってるわ。ありがとう。本当にごめんな。ありがとう。楽しみだな。
僕:おう!仕事終わったらまた連絡する!

仕事が終わり、Aに電話を掛けた。
だが、電話が繋がらない。何回か掛け直したが繋がらない。
僕:なんだあいつ寝てんのか?まったくよー
なんて言いながらコンビニでレッドブル2缶とおにぎりなどを買い、Aの家に向かった。

Aの家に着いたのが18時頃。インターフォンを鳴らすが出てこない、電話をかけるが繋がらない。
すごく嫌な予感がした。Aの車はある。家を見てみるとまだ全部にダンボールが貼られていた。
やばい。絶対やばい。
すぐにA母に連絡を取り、状況を伝え、帰ってきてもらった。
鍵を開け、ドアを開けた瞬間、家の中から大量の煙が出てきた。
急いで家の中に入りリビングに行くとそこに倒れているAがいた。
すぐに救急車を呼び、Aを呼ぶが反応がない。顔も真っ白になっており脈もない。冷たくなっていてだいぶ時間が経っていたのだと悟った。
救急車が到着し病院へ運ばれたが、Aは帰らぬ人となってしまった。
その後、警察も来て、現場検証やなんやらしており、第一発見者の僕も聴取されたりした。何が起こったかわからず上の空だった。
警察が言うには死亡推定時刻は、17時半頃。煉炭自殺だった。
17時半なら頑張れば間に合ったのに、Aが元気になってくれた事に浮かれてコンビニなんてやらなければ助けてやれたんじゃないかと悔しくてたまらなかった。

Aのポケットにも遺書のようなものが入っており、その内容が、家族への謝罪、そして俺への謝罪。パチンコ行かなくてごめんな。お前のおかげで楽しかったよ。ありがとう。
オヤジが俺をずっと呼んでるんだよお前が来た日からずっと。寂しいんだろうから俺がいってやらないと。ごめんな、さようなら。
これが、遺書の内容。
僕は、涙が出なくなるまで泣いた。1ヶ月は立ち直れなかった。悔しさ辛さが押し寄せてきて、俺もAのところに行かないと、と何度も考えた、その時にドス黒いあの時に見たものが僕の中から出てきたのが見えた。
あぁ。Aもオヤジさんが亡くなった時同じ感情を抱いて、Aの中から出てきたドス黒いなにかに負けてしまったんだと思った。
悔しかったよな。苦しかったよな。お疲れ様。ゆっくり休んでくれ。
僕には祈ってやることしかもうできない。
それからというもの、Aの妹や兄もそのドス黒い何かが見えるようになったらしく、友達や職場の人から出ているのが見えてしまい、外に出るのが怖くなってしまったと相談された。
僕は、Aを救えなかったことがすごく悔しくて、俺でも何かできるのではないか?と思い、独学で霊媒を学び始めた。
同じ思いは2度としたくはない。Aの家族にもさせたくない。そう心に誓い修行を始めた。
朝は3時に起き、車で40分ほどの有名な寺へ赴き、200段ほどある階段を登り頂上にある神様が祀られているところで般若心経を唱える。
これを一年続けた。この一年の間に、Aの家族とも定期的に会いに行き、効いているかわからないがお経を唱え、少しでも気持ちが和らいでもらえるように努めた。
そんな生活を続けていたある日、Aの兄、妹から連絡があり、ドス黒い何かに殺されると。
僕は急いで向かった。家に着き家に入った途端、そのドス黒い何かがいることに気づいた。一年前よりはっきり見えるし、あの頃より怖いと言う感情が薄くなっていた。修行の成果なのか、当時の悔しさからなのか、目を逸らさずそれをハッキリ見た。その時にわかったことがある。
そのドス黒い何かは、自分自身だった。
自分自身と言うのは、ドス黒い何かはその人の体から出てくる。それは、自分の中の負の自分なのだと悟った。
あの当時は、目を閉じて見ていたからなのかデカく見えていたが、目で見るとデカくはなく、人と同じ大きさであった。

それは、人の形をしており、顔や腕足などしっかりとした人の形だった。
そのドス黒いものは、何かをしゃべっており聞いてみると、死にたい、辛い、死のう?助けて。など、普段、人間が口に出しづらいネガティブな言葉をひたすら喋っていた。
それを目の当たりにするまで、あんだけ悔しくて、憎んでいたそれは、悪いものではないと思うようになっていた。

それは、誰にでもあるものでみんなの中にいるものなのだと。
人は、不満などを吐き出すと楽になる事がある。それと同じでそのドス黒い何かはそれが具現化したものなのだと。
だが、それのせいでAやAのオヤジさんが亡くなってしまったことには変わりがない。
だから僕はそのドス黒い何かをAの家族から引き離し、僕の中で引き受けることに決めた。
それを浄化するまでには相当な時間は必要になると思うが、負けないと誓ったしこれ以上、Aの家族が嫌な思いするのは心苦しい為、決心した。
僕は、お経を唱えそれを僕の中に引き入れた。
その事を、Aな家族に伝え、僕はAの家をあとにした。
それから数ヶ月ほど僕は俗に言う、鬱病になった。双極性障害や、躁鬱、記憶障害など、様々な病気に苛まれた。

毎日、死にたいと言うような感情が生まれる。何かがあったわけではないが、常に負の感情に飲まれているのがわかる。

気づいたら、包丁などで手首を切ろうとしたり、高いところに登ろうとしたりと、自分ではやりたくないことをやるようになった。

どうしても自分で浄化したいとやってきたが、限界を迎え、地元で有名は住職の元へ相談しに行った。
住職は僕を見るやいなや、涙を流すも笑顔で、よく頑張りましたね。大変だったでしょう。懸命に立ち向かい、生きていてくださりありがとうございます。と言われ、僕は泣いてしまった。

負けないと誓ったが正直すごくキツかった。何度も何度も死にかけ、何度も何度も人生を諦めようとした。
でも、住職の言葉を聞き、その気持ちが晴れた気がした。
頑張れた。僕はこの負の感情に負けなかったと思えた。

それから、すぐに住職に拝んでもらい、すぐに、元通りとは行かなかったが、僕の中にいた、ドス黒い何かは浄化できたと言われた。
ただ、それがまたいつでてくるかわからないから油断せず、気持ちを強く生きなさいと励ましてもらった。

住職に話を聞いてみると、常人では耐えられないくらいのものを引き受けていたらしい。
ドス黒い何かが他の霊も呼んでいたらしく、だいぶ手こずったと愚痴られました笑

その後、僕は霊を見ていない。見ていないと言うよりかは見えなくなっていた。

僕が見ていたドス黒いなにかや、霊は、弱った心に潜みやすい。
病は気からというように、気持ちの強さが大事というのが身に染みて感じました。
これを通して伝えたかった事は、そのドス黒い何かはみんなの中にある。だけど成せばなる。やりたいことがなければ見つかるまで探せばいい。

皆様も気持ちを強く持ちドス黒い何かに負けないようがんばっていきましょう!

話はここで終わりです。長々とありがとうございます。

 

得点

評価者

怖さ鋭さ新しさユーモアさ意外さ合計
毛利嵩志151512151269
大赤見ノヴ151516161577
吉田猛々171415151677
合計4744434643223