「返事」

投稿者:蛇太郎

 

仕事以外で僕はどれくらい喋っているのだろうか?
ふと、靴を履きながら思う。
就職して一人暮らしを始めてから、めっきり口数は減った。
何気ない家族とのやりとりはとても大事だったんだなと痛感する。
ドアノブを回して、玄関を開ける。
「いってきます」
なんとなく口に出した。
「いってらっしゃい」
誰もいない部屋から男とも女ともつかない返事が聞こえた。
つんのめりながら僕は部屋を飛び出し、すかさず鍵をかけた。
誰かが入らない為ではなく、アイツが出てこないように。
皮肉にも僕はその日、不動産業者と話すハメになった。

 

得点

評価者

怖さ鋭さ新しさユーモアさ意外さ合計点
毛利嵩志101010151055
大赤見ノヴ161615151678
合計2626253026133

 

書評:毛利嵩志
最後のオチ一文にユーモアと意外性が詰まっています。「男とも女ともつかない」という表現が不気味で良いですね。

書評:大赤見ノヴ
恐怖は一瞬。しかもいってらっしゃいと言われてるので悪い奴ではなさそう。しかし、何故か文面がリアルで惹きつける力がありましたら