「祖父のこと」

投稿者:あきら

 

祖父は心の病を長く患っていた。
山の中の集落で。築70年にもなる暗く湿った家の中で。祖父含め全員が疲弊していた。

ある日、ぼうっと俯く祖父は、隣にいた私へ囁く。
「毎晩夜中になるとな、男が天井からぶら下がってウラを見て、笑ってる」

大好きだった祖父が、いよいよ壊れてしまったように思えて私は泣いた。
その晩もいつものように祖父は「来るな!殺してやる!」と寝ながら絶叫して、布団の上で暴れる。

数年後、祖父は自死を選んだ。
天井からぶら下がる方法で。
夜中に現れる何かは祖父自身だったんじゃないかと、家族には言えない。

 

得点

評価者

怖さ鋭さ新しさユーモアさ意外さ合計点
毛利嵩志15151051055
大赤見ノヴ151414151573
合計3029242025128

 

書評:毛利嵩志
重い話ですが、鬱々とした感じが文章全体から滲み出ていて、じわじわと後から効いてくるような凄みを感じます。

書評:大赤見ノヴ
やはり親族が怪異によりおかしくなっていく様は怖いですよね。古くは映画エクソシストからの系譜と言いますか、自分に置き換えた時…嫌ですね