大学時代、唐突に昼間、友人と元産婦人科の廃墟へ行った。
落書きなどで汚い中、異様にキレイな、階段下の小部屋を見つけた。開くと仏像が、そこ自体が祠のようにすっぽり収まってる。多分お地蔵さまだが、顔面には誰かの色褪せた顔写真が皺一つなく貼られていた。ただ無理に引き伸ばしたせいで粗く、焦点の合わない満面の笑みがこっちを見つめる。肌はマジックで塗り潰され黒光りし、もはや赤い涎掛けも不吉だった。
居心地が悪くなり、帰った。
後に院長は患者に殺され、焼かれたと知った。首をぱっくり切られたことが直接的な死因らしい。