家は中腹にあり、裏の雑木林ではよく怪火が出る。
「怪火で炙るイカはうまか」
父はそう言って、出現の度にカップ酒片手にイカと出歩く。私はどうせ家で飲んだくれてると母になんやかんや言われるから、怪火にかこつけて散歩がてら外で飲んでるだけだろうと思っていた。
しかし、違った。
三年ほど後、父は腹痛や嘔吐に見舞われ体重も減少した。検査をすると、胃に大きな毛の塊が見つかり、開腹手術を行うことになった。
「ありゃ人魂やったんちゃろっかね」
術後、父は申し訳なさそうに、でもどこか残念そうに漏らした。