一人飲みの居酒屋のカウンター。背後のテーブル席に学生らしき男女数人が座った。
「……で、その時相手の画面に、目が真っ黒の女が映ったの」
「何それ、メッチャ怖い」
「でもリモート会議中だし、他に誰も気付いてないから、お母さんも見えないフリしてて」
どうやら学生達は怪談話に興じているらしい。
「その話、お母さんからもっと詳しく聞きなよ」
「でも、あんま覚えてないと思うよ。コロナが流行ってた時期だから、20年位前の話だし」
聞こえた言葉の強烈な違和感に思わず振り向くと、誰もいないガランとした店内が広がっていた。