「ジャスミンの香り」

投稿者:くさの

 

「ただいま」

玄関の扉の向こう側から、妻の声がした。
その瞬間、俺は持っていた花束を床に落とした。
妻の大好きなジャスミンの花だ。
妻が好きだから、我が家はお茶も芳香剤も、全てジャスミンの香り。
そして今も床に落としたジャスミンの花から、エキゾチックな香りがする。
しかしどういうわけか、花の香りに交じって、刺激臭が鼻に届いた。
俺はこの匂いを知っている。
ガソリンと車が焼ける匂いだ。

「ただいま」

ぎい、と、ゆっくりと玄関の扉が開き、刺激臭が濃くなる。
ジャスミンの花言葉を知っているか。

わたしはあなたについていく。

 

得点

評価者

怖さ鋭さ新しさユーモアさ意外さ合計点
毛利嵩志151515121572
大赤見ノヴ171716161783
合計3232312832155