玄関を出ると、目の前に穴があった。
肩の高さほどで、直径は40cm位か。漆黒で、厚みはほとんどない。試しに人差し指で触れてみると、柔らかすぎるゼリーのような感触だ。にゅるっと、第二関節まで入ってしまった。一旦指を抜く。今度は手首まで差し込んでみた。鈍い痛み。一気に手を引き抜く。手首から先がなくなっていた。傷口は凍っていて、血も出ない。私は半狂乱になって駆け出した。
穴の向こうから会話が聞こえる。
―釣果は?
―手首8つ、首が2つだ。
―しばらく食うのに困らんな。
下卑た笑い声は、次第に小さくなっていった。