昔、私が住んでいた地域には、渇き男という悪霊の伝承があった。
汗だくの太った男みたいな姿で、出会った人に水分を要求する。
渇きが収まれば助かるし、収まらなければ血を吸われて殺される。
キャンプに来たひろ君は、渇き男に遭ってしまった。
隣には大事な彼女がいる。
ペットボトルの水をあげたけど、すぐになくなった。
もっと川辺にテントを設営すればよかったと後悔したそうだ。
恐怖に耐え兼ねたひろ君は、包丁で彼女を刺してしまった。
あふれ出る赤い血を見下ろし、正直ホッとしたらしい。
ひろ君が顔を上げると、誰もいなかった。