猫が好きやけん、と祖母はよく言った。
ペットショップではにっこりずっと見つめ、道で会えばつい顔を綻ばせた。譲渡会もよく行ったし、殺処分をかわいそうもったいなかと常々憂いた。
祖母の墓を参ると、いつも寄り添うように猫が死んでいた。気味は悪いが、死後なお猫に慕われて見え微笑ましく感じた。
「線香上げる理由知っとう? 香りを死者が食べるんやって」
姉が急に言った。夏の太陽に墓がぎらつく。猫を見て笑う祖母を思い出した。熱にあぶられて死臭が漂う。
ぽつり、姉が呟く。
「ねぇ、ばっちゃんは生きている猫が好きやったんかな」