波打ち際で転んで全身濡れてしまい、早く家に帰ろうとタクシーに乗った。行き先を告げると、運転手はルームミラーでじろっと私を見て車をスタートさせた。
「この間お客さんが座ってる席に、いつの間にかびしょ濡れの女の人がいましてね」
私は幽霊と間違われてはいけないから、これは波を被っただけでと説明をした。
「その女の人は突然消えてしまい、私は怖くてスピードを上げたときに事故って死んじゃったんですよ」
えっ、この運転手さん何を言ってるのと思ったとたん、運転手ごとタクシーが消え失せ、私はひとり道路に佇んでいた。