とうとう、憧れのケーキ屋にパティシエとして務めることになった。
ここは赤いスポンジが有名で、子どもの頃からずっと好きなのだ。
勤務初日、さっそくケーキ作りが始まる。
まずはお店を好きになったきっかけの、大好きなスポンジの仕込みだ。
卵を溶かしたところで、教育係の店長が包丁で指を切ってしまった。
慌ててタオルを渡したら、ポタポタと卵液に血を注いでいる。
なんで血なんか入れるんですか!と叫んだら、店長はきょとんとした顔で答えた。
「だって、血を混ぜた方が泡立つよ?」
周りのパティシエも不思議そうに頷いている。