「初体験」

投稿者:柳家花ごめ

 

私は昔から、人には見えないモノが見えた。もう大抵の事には驚かない。

「いないいなぁい…」

 昼下がりの電車、前の駅で乗ってきた若い女が私の前に立ち、両手で顔を覆っている。

「ばあ!」

 現れた顔は、福笑いの様にパーツがバラバラだった。

「いなぁいいなぁい、ばあ!」

 大袈裟な身振りで再び現れたのは、先程とは違う散らかり方の顔。この程度の怪異、見えないフリをすればやり過ごせる…

 ふと異様な空気に気付いて、凍りついた。車内のまばらな乗客は全員青い顔で俯き、こちらから目を逸らしている。

 みんな、見えてる。

 え、これ、なに?

 

得点

評価者

怖さ鋭さ新しさユーモアさ意外さ合計点
大赤見ノヴ151515161677
毛利嵩志121215151266
合計2727303128143