「春眠」

投稿者:朧紙

 

昼下がり、縁側で昼寝していた祖母が言った。
「隣の家、いつからあんなに賑やかになったのかねえ」
空き家のはずだった。

四月の風が通るたび、声が混ざる。
笑い声、食器の音、足音。
網戸越しに、誰かが手を振っているのを見た気もする。

「春は人を連れてくるから、困るね」
祖母がそう言って笑った日、隣の家から
僕の名前を呼ぶ声がした。

振り向いたら、母の顔だった。
でも母は、台所にいた。

 

得点

評価者

怖さ鋭さ新しさユーモアさ意外さ合計点
大赤見ノヴ141414151471
毛利嵩志151815121575
合計2932292729146