ドンッと大きな音がした。
今夜もまた、息子が怒りに任せて壁を叩く。
「自分の価値観を他人に押しつけるな!あんたのこと、死んだって許さねーぞ!」
玄関から走り出ていった息子は、そのままマンションの屋上に行き、飛び降りるのだ。
先月自殺した彼は、毎晩同じことを繰り返している。
妻が、恨みがましい目で私を見ている。
「おれを責めているのか?」
息子の死を知った直後に首をつった妻も、毎晩出てくるのだった。
たまらず叫んだ。
「死人は死人らしく消えてくれ!」
妻が私の耳元で囁いた。
「あなたは、自分が生きてるって思ってるの?」