「裏山の猫」

投稿者:はるくり

 

母の生家は山奥にぽつんと建つ旧家だった。裏手にはすぐ山が迫っており、夜になると何匹もの猫が降りてきた。祖母が晩飯の残りを与えるのを日課にしていたからだ。
その中に恐ろしい声で鳴くものがいて、母はその声を聞くのが嫌で嫌で仕方なかったと言う。
どんな声だったのか。虎のような声か、怪鳥のような声か。
そう尋ねると、女の声なのだと言う。
女の声で「いれてください」と繰り返すのだそうだ。
あまり言っていると、ここにも来てしまうから——と、話は締め括られた。
母は今でも猫が嫌いだ。

 

得点

評価者

怖さ鋭さ新しさユーモアさ意外さ合計点
大赤見ノヴ171717161683
毛利嵩志151512151572
合計3232293131155