「掛け軸」

投稿者:宮山隨園

 

 骨董屋で掛け軸を買った。
 床の間に吊っておいた。
 数日後、夜中ふと目が覚めると、老人の顔が宙に浮いているではないか。
 声を上げようとしたが身体が動かない。老人は一心に掛け軸を見ており、私には目もくれない。
 暫くして老人は消えていった。
 それから毎夜、出現するようになった。

 もしかしたら掛け軸の持ち主かもしれない。
 ある時そう思った。その夜は老人に向かって心の中で叫んだ。
 「それ偽物だぞ。五百円だったぞ」
 老人が私をにらんだ。ぞっとしたが、ふっと放心した表情になったのを見逃さなかった。
 それから、老人は出なくなった。

 

得点

評価者

怖さ鋭さ新しさユーモアさ意外さ合計点
大赤見ノヴ171516161680
毛利嵩志121515151269
合計2930313128149