ある古本屋の棚の真ん中に、古いが美しい装丁の本がある。
客はそれを引き抜くと、表紙を開きページをめくり、首を傾げてつぶやいた。
「……え?これ……」
ぱたん、本が閉じる音がする。
続いて、ことんと落ちる音。
もう客はいない。
ちゃんと戻せよ、他にも見てけよ、何か買えよと思うが仕方ない。
落ちた本を拾い上げ、表紙を開きページをめくり、首を傾げてつぶやいた。
「……こんなに厚い本だったろうか?」
ぱたん、本の閉じる音がした。
続いて、ぼたりと落ちる音。
誰もいない古本屋の真ん中に、古いが装丁の美しい本が一冊落ちていた。