シングルマザーで育った私は小さい頃から母の背に黒い人影が見えた。年を追う度、影は濃くなりついには言葉を発するようになった。
『何故、殺した? 何故?』と。
私は母に人影の事を問い質した。母は泣き崩れ、全てを告白した。夫の暴力に絶えきれず包丁で刺し殺し、死体を山に埋めたのだと。全ては娘を守る為だったと。
娘の為に罪を犯した母を責める事は出来ず、私は全てを忘れる事にした。
数日後、友人が家に来て言った。
「私、霊感あるんだけどお母さんの背中、何か憑いてるね」
「男の人でしょ?」
「ううん、若い女の人」