私は今年50歳程になる長野県生まれで仲川と申します。現在は名古屋市内の一角でバーを経営しております。店を始めてからも数々の『現象』は経験しているのですが、その起因になったのだろう、という体験談をさせて頂きます。これは大学進学を期に愛知県に来て以降の話しです。
盆の季節や年末年始は長野に帰省しておりました。帰省の際は各県に進学した友人や、数年経過した後には、同じく各県に進学した後輩達と帰省を期に集まり、近況報告などに花を咲かせていました。そんな大学2年の夏の日。長野に帰省。例のごとく長野駅前の居酒屋に皆で集まり、いつもの様に近況や昔話をしていた時でした。高校で1年後輩だったSが『先輩、ホラーとか心霊とか好きですか?』と唐突に聞いてきました。『結構好きかも』と答えると『幽霊、見た事あります?』との再びの質問に『いや、一度もない、霊感ないし』と返答しました。事実、私には霊感と言うモノが全くありませんでした。見えずとも感じる、俗に言うイヤな感じすらよくわかりませんでした。するとSが『見たいですか?』と。『 見せれる奴、知ってるんですけど』と。『見せるって何?見せれる奴って?何?どういう事?』との返しに、Sは『高校の時、バスケ部にKっていたじゃないですか』と。Kというのは高校時代、Sと同じ学年だったバスケ部の男子。少しヤンキーの様な風貌というか、そんな印象のある子でした。特に親しくは無かったのですが記憶にはありましたので『あぁ K、いたね』と答えると、Sは少し前の5月の事を話してくれました。Kは現在大学進学で東京に一人暮らし。進学早々でしたが身内の用事の為、帰省した5月のゴールデンウィーク。高校時代の同級生数人で集まり、東京はどうよ?などと話していたそうです。徐々に1人帰り2人帰りと減り、SとKだけに。夜も遅くなる中、Sが運転、Kは助手席。ダラダラとドライブをしていたそうです。そんなさなか国道18号線沿いの、とある 大型中古車店の入り口付近で車を停めるS。沢山の中古車が展示されているのを前に『次はアレ欲しいんだよね、いや、あっちの色もイイな』などと欲しい車の話しをしていると、Kが『イイもの見せてやろうか』と言い、突然彼の左手を握ったそうです。Sの車は日産180SXのMT車。マニュアルシフトな為、日頃のクセなのか、その時も左手はシフトレバーに置いてあったそうなのですが、その手の甲に上から重ねる形でKが手を置き、グッと握ってきたのだそうです。『何?なんだよ?いきなり気持ち悪い』と言うSの手を、レバーに押し付ける様に上から強く握るK。『イイから。黙って見ててみ』と。加えて『ここから○列目のアノ車あるだろ。あれの右側○台目、あの車、見えるか?』と。『あぁ。あの○○(車名)の左だろ?見えるけど…』と答えるS。(※この○は定かではないので○とさせて頂きました)『あの助手席、少し集中して見ててみ』と言うK。何が何だか解らないSは、Kの言うままにその車の助手席を凝視していたそうです。1分程経ったその時、自身の手を押さえるように握るKの手が一瞬、凄く熱くなった様に感じ『アツッ!』と声を出し左手を見た途端、Kが『今』と一言。『え?は?』とSが例の車に視線を戻すと助手席には女性の姿があったそうです。凝視→熱く感じた左手→Kの顔→助手席、と視線を動かしたのはここまでで2〜3秒の出来事だったそうです。先程迄はいなかった助手席には女性が座っている。髪は肩程までの黒髪。少しうつむいているのと夜という事、照明の角度的に顔の全ては判らないまでも鼻から下の顔、白っぽい様なTシャツ姿。血にまみれているとか、オドロオドロしいとかではなく、最初からそこにいた、本当に普通の人間だったそうです。『え…何、アレ…誰?』とのSの問いにKは『アレ、幽霊。生霊とかではなく間違いなく死んでしまってるけど、あの車が事故車とか、あの車で亡くなったとかじゃなくて、あの車の持ち主に憑いてた人で、車で待っていれば持ち主が又戻って来ると思ってるらしい』と説明してくれたとの事。『幽霊?霊?は?何でそんな事までわかるんだよ?なんだよ恐ぇな、何の能力だよ!?』、動転したSの問いに全く動揺する様子もなかったといいます。『何で分かるのかは本当に 何となく、ただ漠然と入ってくるというか聞こえるというか、説明は難しいんだわ。でもなんだろうな。昔から変なのは見てたんだけど、気にしてたらキリがなくてさ。だから普段は見ない様に意識してるんだけど。ただ、【見る!】と思った時、手を握ってる相手にも同じモノが見える事が最近判ってさ。この間、彼女と手を繋いで歩いてて。見ない様にしてるハズなのに、見せようとしてくる奴(幽霊)がいてよ。視界に入ろうとか、こっちの意識と繋がろうとしてくる奴。そういう力技で来る奴って、大抵、よくない奴なんだよ。だから意地でも繋げさせねぇ!ってやってたら手には力が入っててさ。パッと見たら彼女、固まってんのよ。俺、強く握りすぎたのか?と思って、慌てて手を離したんだけど。そしたら彼女が【…今の、ナニ、誰、人?仮装?なんでこっち来たの?】って凄く怖がっててさ。何見た?って聞いたら、【ネクタイをゆるめた髪型ちゃんとしてる30歳位の男。だけど頭の場所が変で。右側の肩の上に頭がのってて。良く見たら首が凄く長くて、その首が頭と繋がってて、突然現れて!手を離したら突然消えた!、ナニ今の!】って言うんだよ。俺は意識を散らしてたから薄っすらとしか見てないんだけど多分同じモノを見てたわ。で、俺思ったワケ!俺が見る、とか、見ない、に集中した時、手を繋いでたりする人にも、幽霊見せられんじゃね?って。で、彼女で何回か練習してさ。試したら成功して。やり過ぎて【気持ち悪い…コワい…】ってフラレたんだけど…』と。そんな一連をKは話してくれたのだそうです。Sは幽霊云々よりも東京に行ったばかりのKに彼女がいて、別れた一連に興味があり『彼女?いたの?』と話しはそちらにシフトしてしまい幽霊話しはそこまで。彼を送り、数ヶ月を経て、今日に至り、ふと思いだしたので『幽霊見たいですか』の話しをしたのだそうです。当時、携帯電話は普及していない為『明日、Kの家に電話して予定を聞いてみます』と、その日はお開きとなりました。翌日Sから電話があったのですが、Kが海の家のバイトで今回は長野に帰省していないとの事。ただ、次、帰省した時、先輩(私)と飲もうって事は伝えときますので、と、その夏の帰省は終わりました。霊的なモノを見た事がない私には、にわかには信じられなかった部分もありながらも、Sの車、国道18号線、大型中古車販売店の店名、場所、全て知っていましたので話しがリアルに感じ、それだけに嘘ではないのだろうな、と少し怖くも感じました。そんな話しを頭のスミに置きながら9月、10月と過ぎ、年末を迎え長野への帰省。また例のごとく友人や後輩と集まり互いの近況を話している中、そこにはS、そして例のKの姿がありました。『おぉ!久しぶり!』『お久しぶりです!』と挨拶を。Kとは私が卒業以来会っていませんでしたので数年分の話しで盛り上がっていました。すると、Kが、『そう言えば、この間、すいませんでした』と。『何が?』と聞くと『いや、夏に、誘ってもらったって。海の家のバイトで帰省できなかったんですけど…』と。私には突然、夏にSから聞いた話しとKの謎の能力の話しとが繋がり、『おぉ!そうだ!見たいんだわ!霊的な!』と言ってしまっていました。既にSから聞いていたのか、Kはニヤリと笑い『じゃ、まだ早いんで、この後、遅くなったら行きますか!』と。結局23時頃にお開き。私、S、K、の3人はSの車 日産180SX。助手席は私、後部座席にK。ツードアのスポーツカーの為、後部座席はかなり狭いのですが身体のデカいKは斜めに、横になる様な形で後ろの席に。狭っ!足痛っ!普通車に変えろ!などと3人で騒ぎながら、ドライブが始まりました。私は以前聞いていた例の中古車販売店に向かうのだと思っていましたが、その車が売れていたら無駄足になる、という最もな意見に納得し。じゃ、どこに?という話しに。正直、高校卒業後から進学で長野を離れた為、デートスポットや心霊スポットなどの車で行ける大人としての活動範囲の長野をほとんど知りませんでした。そんな時、卒業後は市内の専門学校に進学、市内で就職したSの出番です。心霊スポットとかないの?との問いに、霊園に行こう、という事になりました。長野市と言えば善光寺で有名ですが、そこから少し山に上った開けた場所に霊園があるのだそうです。表向きはきれいに整地され墓地の様な少し暗いイメージもなく、長野市の夜景が一望できる人気デートスポット。しかし、裏を返せば、心霊スポットでもあるのだと。現在地からなら裏側行った方が近いし早い、との地元住まいの強みを活かして車を走らせました。本来その霊園に向かう為の表側の太い道路があるらしいのですが、Sが選択した道は、その霊園駐車場の付近に出る道。幅の狭い旧道の様な道路で小さな林、畑や用具を入れる小屋などが点在している本当に昔からあるのだろう、という狭い田舎道でした。緩やかに登る細い道。霊園に近いだろうという頃のカーブ。そのカーブ右側の空き地の様な場所になぜか廃車置き場がありました。暗くて規模はわからないのですが、見る影なく潰された車が数台重ねて置いてあったりフロント部分が大きく破損していたりする車が手前にと10台程置いてありました。田舎だと堤防付近や空き地に、まれに見かける廃車の光景。特に気にもしていなかったのですが。突然、後部座席のKがSに向かって『S!ゆっくり、マフラー吹かさず、ゆっくり、静かに、静かに通れ』と言うのです。『何で?』との私達の問いに『後で話しますんで、先輩は下向いててください。Sは、あっちの廃車、絶対見るなよ、静かにな』と緊張している様子でした。数分後、細い道を抜け、霊園の駐車場に着いたのですが『あそこ。あのスミの方に静かに停めて』とKはまだ緊張している様子。言われた所に車を停め、暫く沈黙した後『もう大丈夫す』とのKの一言に車内の緊張も緩み、すかさず『何?何だったのよ?』との私の問いにKが答えてくれました。『この車のマフラー音がデカいから廃車の所にいた霊3人がずっとこっち見てたんですよ。で、その内1人がメチャクチャ怒って睨んできてて。僕の影響で万が一目が合ったり、合った、と思われたりしたら来ちゃうんで。だから下向いててくださいって言ったんですよ。』と。『ちなみに、この駐車場にも今、音に釣られて大勢集まって来てて。さっきも車停めるまで全員、一斉にこっち見てました。エンジン切ってほしいくらいですけど寒いんで、ね』と。『今はもう、バラけたんで大丈夫す』と『あ、そうなんだ…』しか言えない私とS。『じゃ、もう落ち着いたんで、やりますか!』と全く動じていないK。『先輩、俺の手、強く握って下さい』と、後部座席から身を乗り出しKが左手を差し出してきたので、私は言う通り右手で彼の手を握りました。握手、の様な形ではなく子供や恋人がする様な、指を挟んだ形の握りです。そして『そこの水銀灯ありますよね?』と、中央部に並んでいる水銀灯を指しました。その霊園の駐車場は広くかなりの台数が停められる大きさで、駐車場の外周を囲む様に数本の水銀灯が。駐車場の中央にも互いの車がバックで駐車できる様に車輪留め用の縁石が並び、上部から照らせる様に同じく背の高い1本柱の水銀灯が何本も立っていました。(※耳かきの先端を曲げた、豆もやしの先端を曲げた様な、そんな形をイメージしてください) 冬、寒い、深夜、という事で他の車は1台もなく、ただただ広い駐車場。『そこの水銀灯、そこから4本目、あれ、見えますよね?』と。『1.2.3…4,あ、うん、アレな』と答えると『アレ、何センチに見えます?』と、Kは親指と小指を直線に伸ばし、その4本目の水銀灯にあてる様な仕草で聞いてきました。凄く高い建物でも、遠くからなら指で測れる、親指と人差し指の間に収まる、あんな感じなんだろうな、と察した私は自身の位置から水銀灯に向かって手を伸ばし、親指と小指をその1本柱にあて『んん、大体、15cm、目測で15cmくらい?』と答えると『水銀灯の先端の電球、あの先端から2cmくらい下、柱の右側、見ててください』と言うとKは私の手をグッ!と握ってきました。言われるがままその4本目の水銀灯の上から目測で数センチ下辺りを凝視していると全く何もない夜の空間から白い粉、消え掛けの蒸気の様なモノが現れ、映像を巻き戻しているかの様にサッと集まったかと思うと急に人の形になっていました。モヤ〜人になるタイミングなどは全く分からず、ほんの5〜6秒程の間はモヤ、1秒で人の形、そんな感じに見えました。水銀灯の下、右側にその水銀灯よりやや大きな人間が真横に上半身だけの状態で現れたのです。そこから 生えている様な男性は紺色より少し明るい青みのスーツ、ネクタイまで見てとれる。表情のない白い顔、上半身の切れ目で柱に貼り付いているかの様に横向きにそこにいる。こちらを見ている。辺りは当然暗く大きさもいまいち曖昧な印象。いくら水銀灯に近いからとは言え、霊的な存在が水銀灯で照らされるハズはなく服装や表情までは見える訳がないのですが、なぜかハッキリと見えて。気付くとKと繋いでいる手は熱く汗ばんでおり。『あれ、幽霊、というか、人じゃないんだよな?』と聞くと『はい、幽霊っすね。見た感じ、距離的にアレが1番遠くて安全そうだったんで。こっち超見てますけど。ね?見た目、凄い普通でしょ?あんなの街中にいっぱいいるんですけどね。本当に普通の姿なんすよ。』と当たり前の様に話すK。『あの人、上半身だけとしても全体的に大きさ、変じゃね?水銀灯と比較してもかなり小さくも大きくも見えるけど?』 との質問に『説明する上で水銀灯を使って○○センチ辺りって言っただけ��す。焦点、当てやすいでしょ?本当は、もう少し遠くに浮いてましたよ。今はさっきより近いですけど』と。確かに漠然とあの辺り、と言われても探せなかったかもしれないなと納得。『じゃ車の周り、増えてきたんで、あぶない(霊)のが来る前に帰りますか』とKが手を離した瞬間、白い粉を強く吹いたかの様に一瞬で夜の闇に散る様に消えていきました。実際はあの位置にまだいる、私が見えなくなっただけなのだそうですが。私には初めての経験で、人だったけど浮いてた、下半身なかった、けど服装はキチンとしてて、何で横向き?と何が何やら理解が追い付かず。自宅まで送ってもらう道中、Kは自身の事を話してくれました。妹を含め家族4人全員、何かしらの霊的な力があるのだそうです。他の家族の能力は はぐらかされたので深くは聞けませんでしたが、言えない、話せない様なニュアンスの回答でした。ですが自身の能力は話してくれました。Kの能力はある程度、又は少しでも霊的な 何か がある人間なら肩に手を置いた程度でKが今見ているモノ(霊)を共有できるのだそうです。全くない、感じない人間でも、どちらかの手を強く握ると共有できる、見せる事ができるのだそうです。しかし、それを知ったのは最近で、元彼女で練習した事、見たがる友達で練習している事、他に何かできないか色々と試している事を話してくれました。試した中だと霊的な感覚が全く無かった友人に凄くよくないヤバいモノを見せたら、友達、目、合わせちゃったみたいで。そいつに憑かれたとかではなく少し触られたらしいんですよ。以後、変な物(霊的な)を見る体質になった、霊感が開花したのかも、と笑っていました。また次に帰省したら連絡するわ、と告げその日は解散となりました。全く霊感のない私が幽霊らしきモノを初めて見れたという事も驚きですが、そんなモノを見せる事が出来る人間がいる事にも心底驚きました。中古車販売店でSが見た女性の霊も恐らく本物なのだろうな、と確信しました。…と、ここまででも自身には驚きと貴重な体験なのですが。この話しには後日談があります。
年は明け、5月の連休。私は帰省しなかった為その年の夏、お盆の頃に帰省し、またS、Kらと集まる事に。私は、再び霊的なモノを見せてもらえる!と楽しみにその場に向かったのですが。Kと再会し、『アレから他に何の能力に目覚めたのよ?』…と茶化し気味に言ってみたのですが。Kの表情は一気に暗くなり『実は』と話してくれました。昨年末の霊園での後、帰省も終わり東京に戻ったKはいつも通りの日常だったそうです。そんな中でも時折、心霊スポットへ行き、見えない友人に霊を見せて得意になっていたのだそうです。そんな日々の3月始めの頃、渋谷のある居酒屋で友人達数人と飲んでいた時の事だったそうです。一通り飲み、食べ、程の時間が経った頃、店の奥から歩いて来る男性が視界に入りました。通行の邪魔かも?と反射的に椅子の位置をズラした時、不意にその男性に声を掛けられたそうです。身なりは仕立ての良いスーツ姿で年齢は50歳程、校長先生 みたいな感じ。その男性は突然Kに『君のやっている事はよくない事なんだよ』と。『は?何?何だおっさん?』と言い返すと『君、人に見えないモノを、見えてはいけない人に見せているよね?』と言ってきたそうです。何の事かすぐに解ったKでしたが『何で知ってんだよ、ってか、そんなのお前に関係ねぇだろ?そもそも誰だよ?誰かの親か?』と返すKに男性は『それ、本当にダメだから。いい?やめないと○○○だよ、○○○だから』と言い残して店を出て行ったそうです。この○○○の一言だけは聞こえなかった、というより思い出せないのだそうです。加えてその男性が現れた瞬間を周りの友人は気が付かなかったのだそうです。気付いたらおっさんとKが話してるから知り合いなのかと思った、と。更に、会話の一言どころか、その男性の声が全く聞こえなかった、Kがキレ気味だったから何か言われてんのかと聞いてたけど、友人全員が全く聞こえなかったのだそうです。お酒のせいもあり大して気にも留めずすぐに忘れてしまっていたそうなのですが。そして盆休みに入る少し前。7月半ば頃。埼玉県浦和市の南浦和の友人宅に泊まりに行った時だったそうです。駅に程近い商店街の様な場所。大きくはない中華料理系の居酒屋で同じく友人宅に泊まる仲間達と飲んでいたそうです。そろそろ帰ろうかという頃、自身達からは逆L字に曲がったカウンター席の奥の死角から急に男性が立ち上がり歩いて来たそうです。そこでKは渋谷での件を思い出し身構えたのだと。その男性は3月に渋谷の居酒屋で声を掛けてきたアノ男性だったそうです。服装こそ違えど顔はなぜかすぐにわかった、と。店内に残っている客は自分達だけと思っていた所に男性が現れた事に友人達も驚いたそうですがKは数ヶ月も前の渋谷での男性がなぜ埼玉の、南浦和の、何でこの店に?いつから?何で?と身体が固まってしまった、金縛りみたいだったそうです。そして男性は『君、全然わかっていないね。だめ、と決まっている事はだめなんだよ。それ、使ったらだめなんだよ。もう2度目だから放っておく訳にはいかないんだけど。いい?だめ、だめだからね、本当に○○○よ○○○』と強く念をおし店から出て行ったそうです。あの人、どこから現れた?奥にいた?知り合い?誰?と友人達もワケがわからなかった様子。それよりもK自身は相当驚いたのと恐怖、金縛りの余韻なのか言葉が出なかったそうです。そしてその時もやはり○○○は聞こえなかったと。以前と同様Kが何を言われてるのかは友人達には聞こえず、その男性が『ああ…うう…』と低く唸っている様なボソボソ言っている様にしか聞こえなかったそうです。『先輩(私)、これ、恐くないすか?ヤバイっすよね?本当ビビりましたよ。何か、尾行されたり部屋に盗聴器あるかと思って探しちゃいましたよ。アレ(謎の男性)何すかね?』と渋谷、浦和の一連を話してくれました。『霊見せられた誰かの親とかじゃね?』と聞くと、そんな感じや雰囲気でもなかったし言われなかった。それに霊感ある系の人でも無さそうだ、と。『何となく、それ系は判るんですよ』だそうで。『それ、もうやめた方がいいんじゃね?』と告げると『一時期より全然やってないんですけどね』と。どうやら、年末の霊園の時、余りにも私が『凄い凄い!』と称賛してしまった為、その後も他の人に見せたり友人達、その彼女を練習台にしていたそうです。『さすがに浦和で言われてからは控えてますけど』との返しに『やめてはいないのかよ』と言うと苦笑いしていました。結局、何かよくない空気になり以前、私が称賛した事でKがエスカレートし、変な人に目を付けられたのかも、という引け目から、その日、幽霊を見せてもらう事はしませんでした。又、年末年始のどこかで会おう、と約束し解散しました。そこから少し経った10月頃。Sからの連絡でKが大学を辞めた事を知りました。正確には行方不明だと。SもKと同じ大学に通う共通の長野の友人から聞いたのだそうです。急に大学に来なくなり友人の誰にも告げず大学を辞め、一人暮らしの部屋も退去していたとの事。だからKが長野に帰っているものと思い、その友人がSに連絡したそうなのですが、Sもその事は全く知らなかったと。Kの家に電話したのか?と聞くと『Kの家、電話繫がらなくて。家、送った事あるじゃないですか、知ってたから行ってみたんですよ。そしたら、家、無かったんですよ』と。『…?』『は?無いって何よ?』と聞くと『まぁまぁデカい家だったんですけど、無いんですよ。家。空き地す。更地になってて建物が、家がないんですよ』と。『何?何で?家族は?引っ越した?』の問いに『わからないんです。Kと仲良かった高校の友人達に聞いても東京の大学行ってんじゃないの?しか返って来なくて、誰も知らないんですよ』。『じゃあ、Kの家族全員がいなくなったって事かよ?』の問いには『流石にそこまではわからないですけど。親が引っ越すにしたってKが大学辞める事はないだろうし、親の金銭的な事情が起きたとしたら家は建物付きで売った方が良くないですか?キレイでしたし。デカかったし』と。『そもそも、ついこの間(盆休みの飲み会後)送った時、家ありましたし!急に引っ越します?この短期間で壊します?家?』と。結局、この話しはここで終わりです。
Kには連絡がつかないまま25年以上が経過してしまいました。幾つもの疑問が頭をかすめます。▲Kの〔霊を人に見せる事の出来る〕能力は、やはり人に使ってはいけないものだったのでしょうか?彼の説明に間違いがなければ、謎の男性が渋谷で言った『見えては《いけない人》に見せている』の言葉が気になって仕方ありません。霊感やそれに近しい能力は遺伝という形で先祖から引き継がれたりする、ある意味選ばれた家系、人のみ見る事が《許された》力なのでしょうか。病や事故で死の淵から生還した人でも見える様になったり、そうではなかったりする人がいるのは、見えては《いけない》人、見る事を《許された》人とに分けられているのでしょうか▲謎の男性は一体何だったのでしょうか?店内から突然現れ、しかもそれは渋谷と浦和。数ヶ月の経過と都内と浦和という距離。友人達の誰一人にも聞こえない声。そして○○○と聞こえない(覚えていない)言葉。Kは何と言われていたのでしょうか。▲そしてK家族はKがそれを〔やめなかったから〕家族ごと何かに巻き込まれてしまったのでしょうか?これは推測ですが、恐らく、最後に長野で会った以降もKは〔見せる事〕をやめなかったのではないのでしょうか。そして謎の男性の浦和での言葉、『もう2度目だから』の警告を無視し、3度目、4度目がその謎の男性の逆鱗に触れ、家族をも巻き込む形になったのではないでしょうか。これを書いていて急に、しかし鮮明に思い出した事があります。渋谷、浦和の謎の男性の特徴。私が霊園で見た(見せてもらった上半身のみの男)男性に特徴、似てないか?という事に…。
Sとはそれ以後、やや疎遠になってしまいました。Kについて何かしら情報があれば連絡はあると思いますが25年以上経ってもそれについては話題にも上がらず、連絡もない事から、きっと今でも音信不通なのだと思います。とは言え、事件になった、新聞に載った、とも聞きません。この話しを記している間も、謎の男性、霊?人間?そうではないナニカ?政府の?などと考えてしまいます。K、そして家族がどこかで、無事でいてくれる事を願うばかりです。