「Y子」

投稿者:キツネたぬき

 

「ねぇ、 今日でいい?」
Y子は、突然そう言った。
「何が?」
冷たいお米を弄びながら、顔を上げる。

10月秋手前の風が強いお昼、持参したお弁当は屋上の風のせいか冷えていた。

Y子は視線を合わせずに、立ち上がるとスタスタと歩いていく。
Y子のお弁当は開けられてもいなかった。

そのまま、フェンスを乗り越えると
当然のように落ちていった。

私には、その後の記憶が無い。

それから、毎年
「ねえ、今日でいい?」
という声で目が覚める。

10月9日は、Y子の命日。
目が覚めると、私は屋上に立っている。

 

得点

評価者

怖さ鋭さ新しさユーモアさ意外さ合計点
毛利嵩志10151051050
大赤見ノヴ151614121572
合計2531241725122

 

書評:毛利嵩志
詩的な表現で情景がよく浮かびます。最後の屋上はどこ、なのだろう……?

書評:大赤見ノヴ
きっちりと道連れにしようとしている感が非常に怖くて不愉快。よって高得点です!