部屋の壁から顔が生えてたんです。真横にびろんと。
つい、叩き潰してしまったんですよ。持っていた鞄で。
ばぁん!と家中に大きな音が響き渡ると、その顔は「ぐにゅう」と湿り気のある声を漏らし、肉の弾ける感触と共に、潰れるように壁にめり込んだんです。
幻だと無理矢理思い込み、その日は寝ました。
翌朝、リビングで父が新聞を読みながら
「今に慣れるさ」
と言ってきたんです。
昨日の顔の事かと聞けずにいる内に、父は出勤の為玄関へ向かって行きました。
ばぁん!と大きな音が響き渡った後、ドアの開く音がして、父は会社へ行きました。