「ばぁん」

投稿者:猫科狸

 

部屋の壁から顔が生えてたんです。真横にびろんと。

つい、叩き潰してしまったんですよ。持っていた鞄で。

ばぁん!と家中に大きな音が響き渡ると、その顔は「ぐにゅう」と湿り気のある声を漏らし、肉の弾ける感触と共に、潰れるように壁にめり込んだんです。

幻だと無理矢理思い込み、その日は寝ました。

翌朝、リビングで父が新聞を読みながら

「今に慣れるさ」

と言ってきたんです。

昨日の顔の事かと聞けずにいる内に、父は出勤の為玄関へ向かって行きました。

ばぁん!と大きな音が響き渡った後、ドアの開く音がして、父は会社へ行きました。

 

得点

評価者

怖さ鋭さ新しさユーモアさ意外さ合計点
毛利嵩志10510201560
大赤見ノヴ111112131259
合計2116223327119

 

書評:毛利嵩志
全編擬音と感触だらけのなか、お父さんが出て行ったあと音が聞こえる、というのが、そこはかとないユーモア感も醸し出していて◎。

書評:大赤見ノヴ
父も体験しているこの一連。今後何なのかが知りたくなる構成。