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毛利嵩志の
長編怪談総評
今月も力作をありがとうございました。
長編は和風の呪術的な話が近ごろ流行りでしたが、
今回は王道、ストレートな物語が多かったように思います。
文章力に関しては全員相当なレベルに達しており、差をつけるのが難しかったです。
『君はだれ?』。
感傷的な話でもあり読後感も良いのですが、
名前の重複する事実には何らかの説明が必要かなと思いました。
偶然で流すには厳しいと思いますし。
『inconnu』。
幻想小説的で、どこか栗本薫『幽霊時代』を連想させます。
筆力は確かですが、コンテストとしてはとんがったアイデアの部分も欲しいところです。
『居留守』。
じわじわと浸食する不気味さでは一番でした。
「罪」に対し怪異が重めなのが気にかかりました。
あえてそう描いたのかもしれませんが……。
『ひとしくやって来る』。
肝試しと呪いの伝播は定型ですが、中の男の描写と人物のリアクション、
気持ちの変化などがていねいに書かれておりました。
それだけにもうひとつオリジナルの強い要素が欲しかった気がします。
『ジュースのおばさん』。
少年視点でのサスペンスにたいへん優れた力量を感じ、首席としましたが……
おばさんの国籍が具体的に書かれてある部分については、
直接の言及を避けた方が無難では、と個人的には思います。
次回も皆様の挑戦をお待ちしています。
大赤見ノヴの
長編怪談総評
みなさんお疲れ様でした。
今回はそれぞれ違った方向性の話で個性があったと思います。
その中で差が生まれたのは怖さや分かりやすさだったと思います。
「ひとしくやって来る」は展開的にはベタな展開かもしれませんが、
話の伝わりやすさと描写、昭和の風景が残るノスタルジックな情景と
現代の身近なスマホを介して上手く展開されていたと思います。
「君はだれ?」は切ない話ですが、展開がもう一つ欲しかったと感じました。
「居留守」は現代の怪談と言え、今の私達に沿った題材でした。
しかし配達員の描写に重きを置き過ぎていて、現状何が起きているかが伝わりにくいのと、
都市伝説風としての設定の作り込みと展開がもう少し欲しかったと思いました。
読み手に対してのアプローチを丁寧にしつつ、
アイデアやキャラクターを存分に活かした作品が
一次選考や最終選考で一味出せると思いますので
また来月も沢山の作品をお待ちしてます。
吉田猛々の
長編怪談総評
埋めようがなかったおばさんの喪失感に悲しみも覚える「ジュースのおばさん」、
自分とは一体なんであるか、読後感が一際特殊な「inconnu」、
恐怖や不思議から始まり、ヒューマンドラマで締め括った「君はだれ?」、
逃れられない呪いの連鎖、
どこか懐かしいホラー映画のような雰囲気すら感じる「ひとしくやって来る。」、
誰もが経験している日常の一部、そこから平穏が瓦解していく恐ろしさが印象的な「居留守」、
筆致も巧みで恐怖が迫る臨場感、絶望感も行間から感じられ、
自宅内以外に場所が飛ばない、ある意味クローズドサークル物的な側面もあり、
個人的に「居留守」はとても好みな作品でした。
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毛利嵩志の
ショート怪談総評
今月も力作をありがとうございました。
今回は『冷えている』を第一位に致しました。
「目が合った」を先に書くところ、「歯茎」を描くイメージ力など文章力に隙がない。
荒々しいエネルギーがあればさらに上でしたが、完成度は非常に高いと思います。
『荒らし』はコメント自体に触れていないのが◎ですが、
やや文章が雑然としていたかも。
『ヒステリー』は刑務所という舞台とオチ。
きれいにまとまりすぎた感じも……。
『狩り』も非常に大胆。文末のカットなど上手いのですが、
さすがに分量はもう少し欲しかったかなと。
『夏祭りの帰り道での思い出』。
怖さは控えめですが、天狗を連想させる点など上手です。
『降臨』は最後にもうひとつ跳躍が欲しいと思いました。
『抜け殻』は途中でネタを割るより、
「どうしても手に入れたい抜け殻がある」とボカしておいた方が
効果的と思いますがいかがでしょう。
評価に迷ったのは『本』で、
自在に視点を切り替えていくのは通常やらないことです。
それをプラスに評価することもできますが個人的には引っかかってしまいました。
すいません。
『惜しい』と『手首』の2作品は、
何が惜しいのか、手首の消失が何を意味するのか、
読者が想像できるような導線があればもう少し高得点でした。
来月も皆様の挑戦をお待ちしております。
大赤見ノヴの
ショート怪談総評
皆様お疲れ様でした。
今回は接戦となりました。
その中でも「狩り」が他の作品より一歩前に出れたのは
短さを上手く使っている点だと思います。
必要最低限の文字数で必要な情報だけを使い、読者に考える作品でした。
私は何者なんでしょうか?殺し屋?はたまた家に憑いていた怨霊?面白い作品でした。
同方向性でいうと「手首」「本」も謎ですが、
切れ味で軍配が分かれたと思います。
「抜け殻」も世にも奇妙な物語や昭和ホラーを感じさせるお話でした。
「惜しい」も良かったのですが、
この方向であればもう少し新しさと怖さが欲しかったと言うのが正直な感想です。
「荒らし」は題材について新しさがありましたが、
展開にもう一つ仕掛けがあれば高得点も狙える内容だったと思います。
怪談を短く切れ味良くと言うのは難しい事ですが、
もっと怪談味があるショートが欲しいなと思いました。