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毛利嵩志の
長編怪談総評
文章力の優れた作品が多かった今月。1位には『断頭の家』を推させていただきました。動機の新しさ、違和感の加速と結末など非常に巧み。最後に個人chについて触れるともっとまとまったでしょう。
『暑い』。
セリフからの緊迫感は迫力十分。全体的なユーモアと清涼なラストも◎。それだけに全体的な怖さでは1位に譲ったかも。
『お気持ち表明』。
最も不可解で不気味。「これぞ!」という題名であればさらに高得点も。
『もとにもどしてくれ』。
気持ち悪さを盛り上げていく上手さ。娘も老婆なのでその点も考察が欲しかった。
『時が止まった日』。
物体の空中静止は? という疑問が……。宗教と掛け合わせた新しさは◎。
『美しい記憶』。
高いヒールなどの使い方は玄人はだし。ただネタを知った後に読み返しても納得しづらくもあり……。
『ニューフェイス』。
妹さんも名前呼びで統一し、姉の二面性をもっと対比的に描写できればより良いかも。
『たくちゃんの脚』。
「たくちゃん」の繰り返しがユーモラスなのは意図的でしょうか。老婆に関する表現に鋭いものを感じました。
以上短評で申し訳ございません。来月も皆様の傑作をお待ちしております。
大赤見ノヴの
長編怪談総評
今回は個人的に、あきらさんのもとにもどしてくれが良かったですね。段階を経てキモさが増幅していく流れ…とにかく文章がうまいですね。これね、もとにもどしてくれ…とつぶやく生贄にされた老婆の姿を読み手に想像させないと弱くなってしまう諸刃な内容なんですが、丁寧に段積んでいるので一気に恐怖が襲って来ました。
あとは、神崎さんの暑い…こちらは超大作ですね。それでいてダレる事なく読み進めていけました。お気持ち表明は救いのないバッドエンドで好みはあるでしょうが刺さる人には刺さります。個人的に好きです。
だんだんと上位入選、絶対してくる方が出て来てますがその他のみなさんもレベルが高いです。
私は聞く怪談と違い読む怪談は自分の声で文章が再生されるタイプなので、出来るだけ「?」がない方が好きなのですが今回はそういったは作品が多かったのでワクワクしながら楽しめました!
吉田猛々の
長編怪談総評
「読者の心胆寒からしめてやる」、そんな気概を各お話から強く感じた作品の数々でした。
ラストで先輩の言葉の意味がわかる「断頭の家」、耳なし芳一のような描写が個人的にとても印象的な「お気持ち表明」、優しかったお姉さん、そんなイメージをえぐるかのような『偽善者…』という言葉にギャップ怖を感じた「ニューフェイス」、老婆の気持ち悪さ、糸を引くような粘着感のある悪意が出色な「たくちゃんの脚」、信者の土下座の意味、主人公は何故唯一動きが止まらなかったのか?等、様々な事を考察したくなる「時が止まった日」、構成や気味の悪い裏切りの完成度の高さにうち震える「美しい記憶」、うだるような暑さが文面からも伝わる、悲しさと恐怖の上質な割りもののような「暑い」、その中で今月一番の恐怖を覚えた作品は「もとにもどしてくれ」でした。
遺影の赤い老婆、複数の意味を持つその言葉、奇妙な家の内部の雰囲気などは、かの『黒い家』を読んだ時のような、そんな異質の緊張感を覚えました。来月もまだ見ぬ怪異に出会える事、心から楽しみにしております。
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毛利嵩志の
ショート怪談総評
私は主に、作者が何を意図しどんな言葉を選び配置したか、という点を主に見ます。今月に目立ったのは、言葉が持つイメージの強さでした。
『暗黙の秘密』のロッカー、『近づいてきた何か』のガラスを踏む音、『サーフィン』の「風船のようなもの」がそれです。
それはときに一発ホームランと成り得ます(そこに文章を書きなれない人の勝算があるでしょう)が、構成と掛け合わせるとさらに効果的な力を持ちます。
『お地蔵さま』は石の地蔵を描写し、最後に赤色と「ぱっくり」で血と肉のイメージを描くことに成功していました。
『六角塔』も写真の描写から、生々しい歯の剥き出しや「ギラギラ」を効果的に付け加えます。
『呼び声』。
読み手は音を想像するので、「女の声」は先に述べた方が良いと思いますが、十分に不気味でした。
『一番風呂』は個人的に最も気に入った作品です。悔しそうな状況の丁寧な構築、獣の汚れた風呂のイメージ、祖父の優しさが巧みに描写されて好印象でした。
構成という意味では、最後の一行に至るまでの全てが前振りである『お経』も素晴らしいです。
体験者の感想がどこかズレている『派』にも個性的な味わいがありました。
力作をお送りいただきありがとうございました。来月もよろしくお願いします。
大赤見ノヴの
ショート怪談総評
ショートはどこにストロングポイントを置くかが重要で、しかも鋭さやユーモアさという難易度の高い項目の点数が高いとそれだけで上位に近づけます。そんな中、オラオラさんの六角塔が満遍なく高いポイントを獲得されてました。なんでしょうね…セピア色で頭の中に再生されるんですよね。
おじいの最後のギラギラ…絶対なんかあるやん!良いですねー。怪談好きの好みを全部乗っけたみたいで私はすごく好きです。
そして落合ちゃんさんのお経、これはラストのオチのユーモアさ且つ鋭さが秀逸でした。あとはミヤカツさんの、きづいたから助かったのか?これはオーソドックスな設定と展開を丁寧に構築されていました。
他にもhama3の庭に何かあるは不穏な展開でオチまで持っていき一気に落とす。これはライブなどだと1番客席から声が聞こえてくる内容でした。この辺りの作品が上位です。